ヴァルン・シヴァラムは斬新な太陽電池材料の研究で博士号を取得したが、2013年の卒業時には自分のスキルを民間部門のどこで活かせるか分からなかった。2010年代初頭のクリーンテック破綻の中で、先進的なアプローチに取り組む新興企業はほとんどなかった。ビジネスを支配していたのはシリコン製太陽光パネルで、中国製が主流だった。
その経験からシヴァラム博士は、より優れた、より安価なクリーンエネルギー技術を開発するためには、イノベーション・システムにどのような変化が必要かを模索し始めた。シヴァラム博士は自身の研究や著書の中で、政府は必要不可欠な技術に対し、はるかに多くの資金と早期の政策支援を提供する必要があると主張した。さらに、太陽光発電がこれまで以上に大きな割合の電力を発電するようになるには、まだ大幅な進歩が必要であると結論づけた。
シヴァラム博士は、インドの再生可能エネルギー企業の大手であるリニュー・パワー(ReNew Power)の最高技術責任者(CTO)として、この問題に直接取り組んだ。現在はバイデン政権に参加し、同政権で気候変動問題を担当するジョン・ケリー大統領特使に助言を与え、彼の下でクリーンエネルギー、イノベーション、競争力担当の上級職を務めている。シヴァラム博士は、ケリー特使のインド訪問に随行した。ケリー特使は、インドが2030年の気候変動目標を達成するのを支援するパートナーシップについて交渉し、その中には再生可能エネルギーの容量を450ギガワットに拡大する目標も含まれている。
シヴァラム博士は、気候変動対策に対して世界各国にもっと熱意を持ってもらうために米国が持つ最も強力な手段はイノベーションだと考えている。カーボンフリー技術のコスト削減を推進すれば、より安く、より簡単に、政治的により快く、二酸化炭素を排出しないエネルギーへのシフトを加速できる。シヴァラム博士によると、経済成長を犠牲にする余裕のない貧しい国々にとって、このことは特に重要だ。こうした技術革新がなければ、新興国での排出量は今後数十年のうちに急増するとシヴァラム博士は警告している。
(James Temple)