世界の二酸化炭素排出量の10分の1近くを占めるセメント製造は、気候変動の主要因の1つだ。粉砕された石灰石は通常、砂、粘土、その他の材料と一緒に約1500°Cに加熱された窯の中で焼かれる。
石灰石は分解されるときに二酸化炭素を放出し、1500°Cに達するために燃やされる化石燃料も同様に二酸化炭素を放出する。その結果、1ポンド(約450グラム)のセメントを製造するごとに、ほぼ同質量の二酸化炭素が大気中に放出されることになる。
リア・エリスはもっと良い製造方法を考案した。エリスが2020年3月に共同創業し、最高経営責任者(CEO)を務めるスタートアップ企業「サブライム・システムズ(Sublime Systems)」は、粉砕した石灰石を水に溶かし、電流を流して一連の化学反応を引き起こす。
石灰石を熱ではなく電気で分解するという発想は以前からあったが、以前はもっと高温で試されていた。サブライム・システムズの装置は室温で作動する。それでも石灰石からは大量の二酸化炭素が放出されるが、装置から放出される気体の回収と再利用ははるかに簡単だ。装置の一端からは酸素との混合気体が、その反対側からは水素ガスが放出される。
この電気化学反応により、カルシウム、酸素、水素で構成される白い粉末の純石灰が生成される。これをケイ素と酸素と一緒に窯に入れて焼成するとセメントになる。エリスCEOは現在、同僚と共にさまざまなビジネスモデルを検討しているところだ。太陽光発電所や風力発電所など、ますます安価になる電力を使えば、一般的なセメントと同じような価格で提供できるようになるだろうとエリスCEOは言う。
(James Temple)