ウェアラブル・テクノロジーは、人々の健康に関する情報をリアルタイムに取得することを可能にする。だが、データを収集するセンサーに給電するために、装置がかさばり、非実用的なものになってしまうことが問題だった。
ノースカロライナ州立大学のアメイ・バンドーカル助教授は、型破りな技術で「自己給電型」生化学センサーを作成する方法を発見し、ウェアラブル・デバイスの軽量化・小型化を実現した。バンドーカル助教授のデバイスは、2年前の同様の製品と比べ、大きさは約4分の1、重さは約20分の1で済むという。
センサーを小さくする鍵は、駆動方式の全面的な見直しだった。「こうしたデバイスを開発している研究グループはどこも、とてもかさばるバッテリーを使っていて、センサー自体のサイズと重さは全体の 3%程度でした」と、バンドーカル助教授は言う。そこで同助教授は、酵素の触媒作用を利用して電源なしに信号を生成させることで、バッテリーが不要なセンサーを開発した。
このコンセプトは、一部の化学物質向けの自己給電型センサーに適用できるが、センサーの種類によっては依然として電源が必要になる。そのためバンドーカル助教授は、汗を利用して給電する軽量バッテリーも開発した。アノード(負極)にはマグネシウムを、カソード(正極)には銀と塩化銀を使用し、乾いたセルロースの膜で区切った。装着した人が発汗しはじめると、セルロースの膜が汗を吸収して電解質として作用し、バッテリーが起動してセンサーに給電する。
バンドーカル助教授はこのバッテリーで心拍センサーを動かすことに成功しており、心機能モニタリングを担うウェアラブル・デバイスの可能性を拓いた。
( Neel V. Patel)