
ジョシュア・ブラウダーはよりにもよって、2000億ドルの法律サービス市場をチャットボットで一変させようと決意している。非常に高額な時間制の料金を請求する弁護士の業務の多くをチャットボットに置き換えられると考えているのだ。
「法的手続を担当するのは決して難しいことではありませんし、そのための支払能力があるかどうかは関係ないはずなのです」と、ブラウダーは言う。「正しい結果とは何か、正義とは何かという問題であるべきです」。
2015年、ブラウダーはドゥノットペイ(DoNotPay)というシンプルなツールを開発して、駐車違反に不服を申し立てる人々を支援する小規模な事業を始めた。ブラウダー自身が駐車違反の切符を切られた際に何度も不服申し立てに成功していて、友人達がそのやり方にあずかろうとアプリを作るよう促していた。こうして、アイデアに辿り着いたのである。
ブラウダーの考えた「ロボット弁護士」は、切符の切られた州や発効日等のいくつかの簡単な情報を入力させ、それをもとに請求の取り下げを求める定型の通知書を作成する。ブラウダーによると、これまでに37万5千人がおよそ970万ドルの罰金を免れているという。
ドゥノットペイは7月初旬にポートフォリオを拡大して、職場における差別の告訴やオンラインマーケティングのトライアルの取消しといった、比較的個別性の高い他の法律問題を追加した。数日後、コーディングの経験のない人(弁護士を含む)でもチャットボットを自分で作れるように、オープンソースのツールを導入した。ボストン大学法学部のウォーレン・アギン助教授は、破産を宣告した人が債権者からの要求を回避するためのアプリを開発した。「債務者が利用できる法的ツールは多数ありますが、知られていないのです」とアギン助教授は言う。
ブラウダーはさらに全面的な計画も秘めている。亡命者の保護や離婚の申請のような、煩雑さで知られる法的手続きを自動化、または簡略化することがブラウダーの望みだ。
だが、大きな課題が残っている。請求額に計上できる時間を最大化しようとする弁護士や、アルゴリズムに過剰な信頼を置くことに嫌気が差した利用者が講じる妨害活動に、ブラウダーは直面しているようだ。
(ピーター・バローズ)
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