Abdigani Diriye アブディガニ・ディリエ (33)
ソマリアでスタートアップ企業を支援し養成する初の団体を創立した、IBMのコンピューター科学者。
「1980年代後半に起きた内戦で、私は多くのソマリ人と同じように、祖国から逃げるしかありませんでした。5歳の時、親戚が暮らしているので亡命ができる英国に移住しました。ロンドンの非常に裕福な地域で育ち、コンピューター科学の博士号を取るためにユニバーシティ・カレッジ・ロンドンに進学しました」
「大学在学中は世の中をより意識するようになりました。そして、自分の境遇やそれまでに巡り会ったすべてのチャンスは、非常に幸運なことなのだと気づき始めたんです。2012年にソマリ人技術者たちの訓練と支援をする『イノベート・ベンチャーズ(Innovate Ventures)』という団体の立ち上げを手伝ったのはそのためです。最初に実施した教育訓練はおよそ15人を対象にしたソマリアでの2週間に渡るコーディング・キャンプでした。当時、社会へ与えた影響はわずかでしたが、プログラムに参加した人にとっては意味のあるものでした。そのとき、私は初めてアフリカ大陸に戻ったんです。アフリカ大陸へは20年以上も訪れていませんでした」
「イノベート・ベンチャーズがもっと大きな影響を与えるにはどうしたらいいかと考えるようになりました。2015年、私たちは若いソマリ人向けに雇用訓練をしている2つの非営利団体と協力して有望なスタートアップ企業を探し、マーケティング、会計、製品設計に関する一連の講習に参加してもらいました。こうした5カ月間に渡る起業支援事業によって5つのスタートアップ企業が誕生し、ビジネスを始めるための創業資金としておよそ2500ドルを1人の受賞者に授与しました」。
「翌年、私たちは、貧困と不正を根絶するために継続的な支援活動をしている国際協力団体オックスファム(Oxfam)、アフリカに焦点を当てたオンライン・ベンチャー・キャピタルのコミュニティVC4アフリカ(VC4Africa )、ソマリランド共和国(国際的にはソマリアの一部と見なされ国家としては承認されていない)最大の通信会社テルサム(Telesom)と手を組み、スタートアップ企業向けの10週間の集中講習を実施しました。40、50件の応募があればいいと考えていましたが、最終的には180件近くの申し込みがありました。2週間の新興企業向け訓練に参加する12のスタートアップ企業を選び、全10週間の実習と人材育成プログラムに参加する10のスタートアップ企業を選びました。上位4つのスタートアップ企業は合計で1万5000ドルの資金を受け取りました」
「今年は12週間の講習を実施する予定で、私たちは400件の申し込みを受け付けました。ソマリの大手企業の中にはスタートアップ企業への投資に興味を持っているところがあります。こうした大手企業が私たちの活動に参加して、スタートアップ企業の状況を活発にするために力を貸してくれるのを望んでいます。また、IBMの同僚たちのように故郷から離れたソマリ人に対して、自身の技術を提供したり地元のテクノロジー環境に投資したりするように説得したいとも思っています」。
「ケニアやルワンダのような国には、テクノロジーや技術革新のアフリカの拠点となるための戦略があります。ソマリランドやソマリアは医療、教育、農業の分野で根本的な課題に直面していますが、技術革新やテクノロジー、スタートアップ企業は国の発展を急速に進める可能性を秘めています。私たちは、これまで実施してきたプログラムで国の発展を進める道を歩み始め、ソマリアやソマリランドに対する印象が徐々に変化してきていると考えています」
(エリザベス・ウィケ記者のインタビューをもとに構成)
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