地球上でこれまで生産された推定91億トンのプラスチックのうち、リサイクルされたのは9%に過ぎない。80%近くが最終的にゴミとなり、埋め立て地を増やしたり自然環境を汚染したりしており、分解されるには1000年を要する。プラスチックはまた、マイクロプラスチックとして人体にたどり着き、徐々に蓄積されて健康被害をもたらす。このような問題を解決する1つの鍵となる可能性を持つのが、生物工学でつくられた有機体から生み出された代替プラスチック、すなわちバイオプラスチックである。バイオプラスチックは自然に、より早く分解できる。
バイオプラスチックのアイデアは必ずしも新しいものではないが、産業利用できる程度の量と性質を持ったものを生産することは困難だった。ハーバード大学のワイス応用生物学エンジニアリング研究所(Wyss Institute for Biologically Inspired Engineering)の博士研究員であるアビナシュ・マンジュラ ・バサワンナは、同僚とともに、「アクアプラスチック(AquaPlastic)」と彼が呼ぶ、生体材料に基づいた新たな種類のプラスチックを開発した。商業規模で生産でき、多くの石油系プラスチックと同等の耐性があり、水中においてわずか2か月で分解する。
アクアプラスチック自体は強酸や強塩基に耐性がある。水に触れると粘着性が生まれ、コーティング材として使用できる。そのような性能を持つプラスチックは世界初だ。傷が付いても、コーティングは水で「治癒」できる。そして、最も重要な点としてバサワンナが挙げるのは、「水に流せる」素材であるということだ。「プラスチックやマイクロプラスチックの問題がこれ以上悪化する心配がないのです」。バサワンナはパートナーとともに、アクアプラスチックを扱うスタートアップの創業に着手している。コストの安いこの生分解性プラスチックが大規模に生産できれば、従来のプラスチックコーティングと競合できる可能性がある。