ゲーナ・アルハナイ(南カリフォルニア大学)

Ghena Alhanaee ゲーナ・アルハナイ(南カリフォルニア大学)

石油採掘施設や原子炉、淡水化プラントといったインフラへの過度の依存は、危機の際に惨事をもたらす可能性がある。アルハナイのデータ駆動型フレームワークは、国家が準備を整えるのに役立つ可能性がある。 by MIT Technology Review Editors2021.02.01

ゲーナ・アルハナイは博士課程生として南カリフォルニア大学に通っていた頃、数々の不穏な事実に遭遇した。故郷のアラブ首長国連邦(UAE)などのペルシャ湾沿岸諸国が、自分が思っていたよりも遥かに災害に脆弱であるということだった。ペルシャ湾には800カ所以上の石油プラットフォームがあり、年間何千隻ものタンカーが浅瀬を航行している、世界最大級の石油と天然ガスの生産地であることに加え、UAEがアラブ半島初の原子力発電所を建設中だったからだ。一方でいくつかの湾岸諸国は、飲用水のほぼすべてを淡水化したペルシャ湾の海水に依存しており、緊急時の備えは2、3日分しかなかった。アルハナイは、「万が一のことがあれば淡水化プラントは稼働できなくなります。今のところバックアップもまったくありません」と述べる。

「万が一のことがあれば淡水化プラントは稼働できなくなります。今のところバックアップもまったくありません」

その事実を知って以来、アルハナイはペルシャ湾の災害対策のギャプ解消にエネルギーを注いできた。現在は、湾岸地域が原油流出や原子力事故のリスクを低減できるような、データ駆動型のフレームワークを開発している。湾岸の原子力産業は立ち上がったばかりで、石油およびガス業界はデータを秘匿しているため、アルハナイは米国の情報に頼っている。アルハナイの統計モデルは、過去10年間における米国の原子力および海上石油業界の安全に関する4000件以上の事故データを利用している。アルハナイの目標は、小さな事故がどんな場面でどう組み合わさった場合に大事故につながっていくのか、理解を深めることである。

アルハナイのフレームワークは、まさにそれを実現しようとしている。アルハナイは、完成間近のバラカ原子力発電所や大規模な石油、それに淡水化施設の周辺など、ペルシャ湾で特に脆弱な部分に研究成果を適用するつもりだ。最終的には、アルハナイは自身の研究が、湾岸諸国政府がさらに強固で連携のとれた災害対策戦略の策定に役立つことを願っている。