アレックス・ル・ルーは、3Dプリントが建築設計の新たな可能性を切り開き、世界中の住宅建設コストを削減できると考えている。
テキサス州オースティンを拠点とするスタートアップ企業、アイコン(Icon)の共同創業者であるル・ルーは、わずか24時間で家全体の壁面を構築できる産業用3Dプリンター「ヴァルカン(Vulcan)」を考案した。国連によると、適切な住居をもたない人々が世界に約16億人存在し、世界の都市人口のうち3分の1が非公式の居住地やスラムに住んでいる。その理由の一つは、従来の建築方法にあるとル・ルーは語る。これまでの建て方は、材料の浪費と過剰な労働コストにつながり、住宅価格を引き上げているため、多くの貧しい家族にとって手の届かない存在になっているという。
ヴァルカンは、建設工程に自動化を導入することで、その状況を変えようとしている。高さ約3.7メートルのロボット装置は、別の機械から供給される特殊なコンクリート混合物を、巨大な歯磨きチューブのように数センチの厚さで押し出す。アイコンの技術者が家の設計を事前にプログラミングしておくことで、現場のオペレーターの仕事は極力単純化されている。「これら2台の機械を現場に設置したら、アプリをダウンロードして、作業をすぐに始められます」とル・ルーは話す。
2018年3月、アイコンは、米国で初めて公認された3Dプリントの家を建てた。現在、オースティンとメキシコに16戸の家を建てており、それらの地域で、低所得層50世帯を収容する世界初の3Dプリント・コミュニティを建設している。ル・ルーによると、アイコンの最終的な目標は、住宅建設コストを50%削減することだという。