ズラトコ・ミネフ(IBMトーマス・J・ワトソン量子研究所)

Zlatko Minev ズラトコ・ミネフ(IBMトーマス・J・ワトソン量子研究所)

ボーアとアインシュタインを悩ませた量子跳躍の課題を解決し、量子コンピューティングのエラーを減少させる可能性への道を開いた。 by MIT Technology Review Editors2021.01.29

ズラトコ・ミネフは、ニールス・ボーアとアルバート・アインシュタインを悩ませていた量子物理学の中心的課題を克服した。20世紀のほとんどの間、原子は突然、予測不可能な離散的な量子跳躍で、あるエネルギーレベルから別のエネルギーレベルへと変化すると考えられていた。ミネフはこの仮説が誤りであることを証明したのだ。「量子物理学は、これまで考えられていたほど予測不可能で離散的ではありません」とミネフは言う。

ミネフの実験により、原子に光の形でエネルギーを浴びせると、瞬間的な跳躍ではなく、あるエネルギーレベルから次のエネルギーレベルへと連続的かつ滑らかに遷移することが分かった。ミネフはさらに、原子のエネルギーレベルの変化を素早く検知して制御することで、途中で量子跳躍を止めたり、跳躍が完了する前に反転させたりすることができた。「短期的に見ると、このプロジェクトのために開発したモニタリング装置で実際に予測が可能になります」(ミネフ)。

ミネフの研究は、量子コンピューティングに大きな影響を与える可能性がある。量子コンピューターには、ミネフの実験における原子のように、素粒子が異なるエネルギーレベル間で跳躍するときに起こるエラーがたくさんある。跳躍が完了する前に検出し、反転させられれば、量子コンピューターの能力を飛躍的に向上させられるはずだ。暗号解読や化学反応のモデル化、天気予報などが可能になるだろう。