ナディア・ピーク(ワシントン大学)

Nadya Peek ナディア・ピーク(ワシントン大学)

人々が考えることがほぼすべて実行できるような新しいモジュール式コンポーネントを開発し、可能な限り低コストで入手しやすいものにしようとしている。 by MIT Technology Review Editors2021.01.27

学部生時代にインスタレーションでアーティストとコラボレーションしたとき、使用していた道具や機器による制約を何度も経験したナディア・ピークは、不屈の精神で機械に手を加え始めた。自分の運命を受け入れるのではなく、望むことができるようになるまで使用していた機械をハッキングすることを選んだのだ。ピークの考えはこうだった。なぜ機械はもっと柔軟になれないのか?ツールに合うようにアイデアを変更する代わりに、アイデアに合うようにツールを変更できるとしたらどうだろう?誰もがほぼ何でもできるような特定用途向け機械の開発を目指すピークの旅は、こうして始まった。

ピークの目標は、アイデアを持っている人に、そのアイデアを効率的に物理的実体に変換する手段を提供することだ。

 

現在、ピークはワシントン大学で助教授を務めながら、このビジョンに専念している。とるに足らないタスクから科学的なタスクまでを実行するために、あらゆる方法で組み立てることができ、ほんの少しのコードでプログラムできる、モジュール式コンポーネント(モーター、メカニカルアーム、資材切断機)を設計している。ピークは開発したコンポーネントの使い方を教えるとき、人々の創造性に喜びを感じるという。これまでに、Tシャツ・デザイン機、カクテル撹拌機、3Dプリンター、化学実験用ピペッティング機が作られた。デスクトップ程度の大きさの機械が多く、元の利用目的を終えた後は、分解して新しいタスクのために再組み立てできる。

ピークはこのツールを可能な限り低コストで入手しやすいものにしようとしている。フレームに段ボールのみを使用しているものもあり、設計図はダウンロードできる。ピークの機械は学生、ハッカー、さらには建築家にも使用されている。

ピークの目標は、アイデアを持っている人に、そのアイデアを物理的実体に変換する手段を提供することだ。コンピューターはもともと特定のタスクを実行するように設計されていたが、より汎用的なものに進化したとピークは指摘する。物理的なタスクを自動化する機械も何ら変わりはないとピークは考えている。「最終的には自動化が、創造的な問題解決に使用できるありふれた方法になってほしいと思っています」。