FB参入の衝撃、国際決済銀行もデジタル通貨の発行支援へ
「中央銀行の中央銀行」と呼ばれる国際決済銀行(BIS)のアグスティン・カルステンス総支配人は、ほんの数カ月前、中央銀行が発行するデジタル通貨の将来的な可能性について、何ら価値を見出していないと話していた。しかしどうやら、心境に変化があったようだ。フェイスブックや他の「大手テック企業」の金融サービスへの参入がその理由と見られる。
カルステンス総支配人はフィナンシャル・タイムズ紙に対し、BISは現在電子マネーを開発、あるいは研究している「多数の」中央銀行を支援すると語った。「デジタル通貨市場は私たちが考えているよりも早く一般化し、中央銀行のデジタル通貨を提供できるようにする必要があるのかもしれません」。
他の多くの中央銀行関係者は、ビットコインのような不安定かつ主に投機目的で使われている暗号通貨の重要性を否定してきた。だが、フェイスブックが計画している電子マネー「リブラ(Libra)」は不換通貨によって裏付けされ、安定した価値が維持できるよう設計されている。
そうした点と、フェイスブックが持つ膨大かつ世界的な影響範囲により、リブラの計画に弾みがつく可能性がある。金融サービスに進出する大手テック企業は、フェイスブックだけではない。BISの新しい年次報告書では、アリババ(阿里巴巴)、アマゾンやグーグル、テンセント(腾讯)の名も挙げられている。そして、ネットワーク効果により「巨大テック企業が金融サービスにおいて、支配的な地位を占める潜在力があります」と警告している。
カルステンス総支配人は、中央銀行が個人顧客にデジタル通貨サービスの提供を余儀なくされるという現実が始まれば、中央銀行によるデジタル通貨発行が金融システムに「大きな影響」を与えるだろうと警告している。中央銀行は伝統的に、商業銀行向けの口座のみを扱ってきたからだ。
そうした変化が世界的な金融システムの安定に与える潜在的な影響は明確には分かっておらず、カルステンス総支配人は未知の分野へ足を踏み入れる中央銀行の意義に疑問を投げかけている。それでも、フェイスブックや他の大手テック企業が金融サービスに参入するのであれば、中央銀行も参入せざるを得ないのかもしれない。
少なくとも、BISの新しい年次報告書では、「リスクを制限しつつ収益から利益を得るために、テック企業の金融サービス参入に対応する」新しい「包括的な」公共政策が必要だと結論付けている。