ブレンダン・レイク助教授は、1つの新しい手書き文字のサンプルを見ただけで人間と同じように学習できる人工知能(AI)プログラムを開発した。AIが自動運転自動車を制御し、世界トップクラスの囲碁棋士に勝利した今日では、平凡なことに思えるかもしれない。しかし、今日の最新の深層学習の手法はどれも何千ものサンプルを訓練に使うもので、新しい問題に学習内容を生かすのは得意ではない。一方で、人間は馴染みのない物でも一度見せられただけで認識でき、絵に描くことも、物体のさまざまな部分を理解することもできる。
レイク助教授がヒントを得たのは、認知心理学だった。何千もの文字サンプルをプログラムに読み込ませるかわりに、レイク助教授は文字を手書きする方法をプログラムに教えることにした。人間が手書きするアルファベット30文字をモーション・キャプチャーで記録したものを示し、ペンがそれぞれの線をどのように描くのかプログラムが学習できるようにした。同様に、プログラムは1文字が概ねどれくらいの画数なのかや、線と線の繋げ方も学習できるようにした。見慣れないアルファベットを見せられると、プログラムは文字を認識して人間と同程度に再現できた。
レイク助教授は同様の手法を用いて、機械が1つの話し言葉のサンプルを聞いただけで認識し、再現するようにした。また、人間が問題解決のために工夫して質問をする方法を機械に真似させた。
人間が学習する方法を機械に習得させることは、ビッグ・データを使った訓練が不可能な分野でのAI利用にきわめて重要なことが分かっている。「自宅用にスマート・ロボットが欲しいとしましょう。箱から出した瞬間からロボットが何でも知っているかのように、前もって訓練しておくことも、プログラミングしておくこともできません。子どもたちは新しい概念を毎日学びます。本当にインテリジェントな機械はそれと同様でなければなりません」。
(エド・ゲント)
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クレジット | Photograph by Celeste Sloman |
著者 | MIT Technology Review編集部 [MIT Technology Review Editors] |