マルジエ・ガセミは博士号の研究中、ベス・イスラエル・ディーコネス・メディカルセンター(Beth Israel Deaconess Medical Center)の集中治療室で医師らと共同研究をしていたときに、医師が抱える最大の課題の1つが情報過多であると実感した。そこでガセミは乱雑な臨床データを、入院中の患者にとって有益な予測に役立てる情報へと変貌させる、一連の機械学習の手法を設計した。
設計は容易ではなかった。一般的に機械学習には、膨大かつ慎重に分類されたデータセットが必要とされる。一方、医療データは不規則かつ多様な形式で供給される。たとえば、医師が書いた日々のメモから、1時間ごとの血液検査、絶えることなく送られてくる心臓モニターのデータまで幅があるのだ。
しかも、視覚と言語は人間には本質的に理解しやすい仕事なのに、診断や治療法の決定については、高度な訓練を受けた専門医ですら異議を唱えることがある。このような一連の課題があるにも関わらず、ガセミは多様な臨床データを取得し、患者の入院期間、入院中に患者が死亡する可能性、患者が輸血や人工呼吸器などの治療介入を必要とするかどうかといったことを正確に予測する、機械学習アルゴリズムを開発した。
今秋、ガセミはトロント大学とベクター研究所に加わり、現地の複数の病院で自らが開発したアルゴリズムをテストしようとしている。
(エッド・ジェント)