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遺伝子編集は、鎌状赤血球症の原因となるような遺伝子の突然変異を修正するのに極めて有効な手法だ。生物学者は、DNAや他の物質を、細胞に取り入れるためのより良い方法を求めている。遺伝子編集に必要な物質は通常、ウイルスや電気穿孔法を用いて細胞内に導入されるが、ウイルスは危険な副作用を引き起こす恐れがあるし、強い電気パルスで細胞膜に穴をあける電気穿孔法の過程では多くの細胞が破壊される。
電気穿孔法を代替するより穏やかな手法としてレーザーを使う方法がある。しかし、この手法で使われるレーザーは一般的に非常に強力で高価なうえ、一度に1個の細胞にしか注入できない。臨床で用いるには遅すぎる速度だ。
ナビハ・サクライェンの設計によるレーザー・システム付加型のナノ構造の装置は、この状況にイノベーションをもたらした。この装置を付加したレーザー・システムは、レーザー光のパルスを一度に多数の細胞に照射することで、臨床的に有用なスピードで遺伝子編集物質を投与できる。サクライェンが生み出したこの手法は、高価なレーザーを必要としない。しかし、比較的安価なレーザーで十分であることを他の研究者や彼女の指導者に説得するのに時間がかかったという。「細胞には関係のないことです」とサクライェンは述べる。
サクライェンは、自身のアイデアを商品化し、遺伝子編集ツールを用いて細胞を加工するため、セリノ・バイオテックという企業を設立した。
サクライェンは物理学者としての教育を受けたが、レーザー物理学、ナノ材料学、合成生物学など様々な科学分野の間を行き来することをいとわない希有な人物だ。サウジアラビア、バングラデシュ、ドイツ、スリランカで育った経緯により、適応力を持つようになったという。「新しい場所や異なる科学分野の境界線上は、私にとって居心地がよいのです」とサクライェンはいう。
(キャサリン・ブーザック)
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クレジット | Photograph by Simon Simard Styling by Laura Dillon |
著者 | MIT Technology Review編集部 [MIT Technology Review Editors] |