エリザベス・ナイコは、アフリカの地方における主要な開発課題に対する1つを解決方法を編み出したと考えている。その問題とは、安価で効率的に地域に電力を供給する方法だ。
ロンドンのスタートアップ企業であるモジュラリティ・グリッド(Modularity Grid)のナイコCEO(最高経営責任者)は、小規模送電網の性能を向上させるテクノロジーの開発に取り組んでいる。小規模送電網は国家ベースの送電網を引くのに多額の費用を要するような地域の家庭や企業に電力を供給する、文字通り小規模な発電・送電システムのことである。だが、小規模送電網にも限界はある。個人の顧客の電力需要を追跡して満たすのはきわめて難しく、電力の過剰生産や燃料の非効率な利用、電気料金の値上がりなどが起きやすいということだ。ナイコCEOは共同創業者を務めるマンデリス・エナジー(Mandulis Energy)での経験を通じてこのことを学んだ。マンデリスはウガンダ北部でバイオマス燃料で発電する小規模送電網を展開している企業だ。
モジュラリティ・グリッドでは、小規模送電網のオペレーターが個人の電力消費を正確に追跡・予測できるクラウドベースのスマートなプラットホームを設計した。余った電力は、「アンカーロード(anchor load)」と呼ばれる一定の電力を必要とする特定のユーザーに振り向けられる。ナイコCEOがモジュラリティ・グリッドのソリューションを試験運用しているウガンダのマンデリスの現場では、村の精米所もアンカーロードの対象に含まれる。精米所は、小規模送電網自体の燃料となるもみ殻の供給源でもある。「必要な分だけ電気を供給でき、余剰電力を地域の価値創出に使えれば、低収益でも小規模送電網は実現できます」とナイコCEOは語る。
ウガンダ北部に生まれ、子ども時代に内戦から逃れたナイコCEOは現在、自身のソリューションを他の小規模送電網業者に売り込んでいる。そしてアフリカ全体のさらなる電力プロジェクトについて、トータル&ヴィンチ・エナジーズ(Total and Vinci Energies)と協力していく予定だ。最終的に、このソリューションは、アフリカだけでなく他の地域でも国内電力網の効率アップにつながると考えられている。
(ジョナサン・W・ローゼン)