アシュトシュ・サクセナは、「キャスパー(Caspar)」と呼ばれる人工知能(AI)システムを開発した、ブレイン・オブ・シングス(Brain of Things)の最高経営責任者(CEO)兼共同創業者だ。キャスパーは住居を、人が話しかけたり互いにやりとりしたりできる、一種のロボットに変える。今夏中に、カリフォルニア州と東京都にある500戸のマンションにキャスパーが搭載されることになる。
キャスパーを搭載するマンションの各住戸には、モーションセンサーや湿度センサー、マイクロホン、カメラ、温度自動調節器、自動化された電化製品など約100個の機器が設置される。これらの機器すべてが、居住者の行動に関するデータをキャスパーに送る。キャスパーはいくつかのアルゴリズムを用いてそのデータを分析することで、徐々に居住者の習慣や好みを学び、それらに順応していく。
居住者が、いつ荷物が自宅に届くのかいろいろと問い合わせをする傾向があるならば、キャスパーは荷物の到着時に居住者に通知するようになる。さらにキャスパーは、居住者が今していることに合わせて、音楽のプレイリストを調整できるようになる。
個人の私生活に関するさまざまな詳細情報を、コンピューターが勝手に収集しても安全なのかという質問に対してサクセナは、キャスパーによって生成された機密データは家の中に保存され、クラウドにはアップロードされないと答えた。
キャスパーを開発するアイデアが生まれたのは、2015年にサクセナが同居人と2台のスマートスピーカーを家に持ち帰った時だった。アマゾン・エコーなどのようなスマートスピーカーは、音楽の再生、オンライン注文、照明スイッチの切り替え、その他多くの家の周りのことができる。だが、サクセナと同居人はガジェットを思いどおりに動かすのに四苦八苦した。スマートスピーカーは、命令とは違う照明を消すことがあったり、主人のスケジュールが変更された場合、それに応じて他の機器を制御する方法を調節できなかったりした。
その結果、ロボット工学研究者のサクセナは、自らより良いシステムを開発することにした。
「もう家に荷物がいつ届いたのか、心配する必要はありません」とサクセナはいう。「キャスパーはそのようなことをあなたに通知し、食器洗い機用洗剤を注文し、あなたの好みに合わせて住居環境を調整してくれます」。
(イェティン・サン)