KADOKAWA Technology Review
×
ニュース Insider Online限定
Nerves repaired using bioscaffold fitted with “radio” antenna

「アンテナ」にもなる生分解性バンドで神経を再結合、損傷を修復

生物の体が末梢神経の損傷を修復できるのは、ある特定の状況においてのみであり、方法も限られている。オーストラリアのウェスタンシドニー大学の研究者は、生分解性のスキャフォールド(足場)を用いて切断された神経を再結合し、体外で生成した磁場を用いることで再結合した神経に電気刺激を与えて修復と再生を促す新たな方法を開発した。 by Emerging Technology from the arXiv2018.08.28

損傷を受けた神経を修復する体の能力には謎が多い。神経学者にとって、脳と脊髄から成る中枢神経系の損傷を治せないことは明らかなようだ。しかし、体の他の部位にある末梢神経系の損傷となると話は別だ。

体が特定の種類の末梢神経の損傷を修復できることは、数多くの証拠により示されている。だがそれは、ある特定の状況にのみ可能なことであり、修復方法も限られていることが多い。そのため、切断された神経を再結合し、修復と再生を促す新たな方法の開発に大きな関心が寄せられている。

オーストラリアのウェスタンシドニー大学のアシュール・スリオーら数名の研究者が今回発表した研究が重要なのは、そうした理由による。スリオーらの研究チームは、生分解性のスキャフォールド(足場)を用いて切断された神経を再結合し、体外で生成した磁場を用いて再結合した神経に電気刺激を与える新たな方法を生み出した。

同研究チームによると、この手法は、神経を再生するための従来の方法と異なり、最小限の侵襲で、ラットの体内の切断された神経を修復できるという。

近年になり神経学者たちは、短時間の電気刺激が神経の修復と再生を大幅に改善することを発見した。

だが、この種の治療法を完全なものにするには、いくつかの重大な課題がある。一つは、切断された神経は縫い合わせられることが多いが、その際の縫い目が傷跡を残し、炎症を引き起こす大きな原因になることである。

電気刺激を与える方法も課題となっている。多くの場合は、体の外側に伸びるワイヤーにつながった伝導性バンドを神経の再結合部位の周りに取り付けて …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. What’s on the table at this year’s UN climate conference トランプ再選ショック、開幕したCOP29の議論の行方は?
  2. This AI-generated Minecraft may represent the future of real-time video generation AIがリアルタイムで作り出す、驚きのマイクラ風生成動画
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者決定!授賞式を11/20に開催します。チケット販売中。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る