KADOKAWA Technology Review
×
盛り上がり欠けるVR市場、
遊園地やゲーセンでは
「高くても人気」の理由
カバーストーリー 無料会員限定
Forget about VR in the living room; this summer it’s on waterslides and in arcades

盛り上がり欠けるVR市場、
遊園地やゲーセンでは
「高くても人気」の理由

家庭用VRヘッドセットの売上が低迷する中、ゲームセンターや遊園地、テーマ・パークではVRアトラクションが好調だ。ドイツの水上公園ではウォーター・スライダーを滑り降りながら楽しむVRコンテンツがこの夏、人気となりそうだ。 by Rachel Metz2018.07.19

ジョシュア・フェンドリーは自称、実質現実(VR)の懐疑論者だが、同時にスターウォーズ・オタクでもある。7月、たまたま上司の結婚式に出席するためにラスベガスのストリップ街に行く必要があった。ラスベガスではスターウォーズのVRを体験できることを知って、ぜひそれは試さねばと思った。

スターウォーズのVRコンテンツ「Star Wars: Secrets of the Empire(帝国の秘密)」は入場料が35ドル、プレイ時間はおよそ15分だった。フェンドリーは火山の惑星ムスタファーを訪れ、帝国の情報を収集するためにストームトゥルーパー(銀河帝国軍の機動歩兵)に扮した。背中に背負ったコンピューターに接続されたベストは敵の放火を浴びると振動した。熱、風、焦げた匂いなどの特殊効果があり、実際に手に持てるブラスター銃など実世界の物体にマッピングされたバーチャル物体もあった。ある時点で、フェンドリーは手を伸ばしてVRドロイドに触れ、実際にドロイドの感触を感じたという。この体験はフェンドリーにとって衝撃的だった。

「あの小さな世界には永遠に居続けることができました。本当にクールだったんです」。

フェンドリーのバーチャルの旅は、ユタ州リンドンに本拠を置くボイド(Void)の出張スタジオで体験できた。スタジオはグループを組んだ人が一緒にプレイできるVR専用施設だ。2016年以降、ボイドは8つのVR専用施設を開設した。ほとんどは米国にあるが、トロント、ロンドン、ドバイにも開設しており、今年中にもっと多くの施設を開設する予定だ。

ボイドのクリフ・プルーマー最高経営責任者(CEO)は、入場者数や拡張計画の詳細を明かさないが、週末や休日ともなると一部の施設には1000人を「優に超える」人が連日訪れるという。

ある意味、VRを中心とする新しいビジネスを企画することや、既存のテーマ・パークやゲームセンターで特にVRに力を入れたり、スペースを割いたりすることは馬鹿げているように思える。フェイスブックのオキュラス(Oculus)、HTC、ソニーなどの会社が強力に推進しているにもかかわらず、VRテクノロジーは大衆市場に受け入れられていない。VRヘッドセット(ゴーグル)の販売は現在厳しい状況にある。調査会社のIDCが推測したデータによると、VRガジェットの出荷数は2018年初頭の3カ月間で31%近く落ち込んだ。落ち込みの主な理由は、携帯電話を利用する安価なゴーグルがハイエンドのスマートフォンとセット売りされなくなったこと、オキュラス・ゴー(Oculus Go)のようなVRを運用するためのPCを必要としない新しいスタンドアローン型の低価格ゴーグルの販売がまだ軌道に乗っていないことだ(今年後半、特にクリスマス商戦で販売が伸びると期待されているが、期待通りに売れるかどうかは不透明)。

大半の人は自宅のリビングルームでVRを楽しみたいとやかましく要求しているわけではない。しかし、この夏、VRテクノロジーは、ゴーグルを装着してウォーター・スライダーを滑り降りたり、VRゲームをプレイしたりできるVR専用施設やゲームセンター、遊園地、その他の家族向けエンターテインメント・センタ …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. What’s on the table at this year’s UN climate conference トランプ再選ショック、開幕したCOP29の議論の行方は?
  2. This AI-generated Minecraft may represent the future of real-time video generation AIがリアルタイムで作り出す、驚きのマイクラ風生成動画
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者決定!授賞式を11/20に開催します。チケット販売中。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る