シュレイヤ・デイヴは、自身の博士課程の研究には実用的な応用はないと思っていた。デイヴは、酸化グラフェンでできた分子濾過膜を研究していた。酸化グラフェンの分子濾過膜は、現在使われているポリマーやセラミックに比べて安価で、劣化しにくい。だが、彼女の手法は水道産業で使うには高価すぎた。
ところが、ネイチャーに掲載された論文は、自身の技法が食品や飲料、医薬品、燃料に使われる化学物質を分離する工業プロセスで、大量のエネルギーを節約するのに使えることを確信させた。こうした工業プロセスで使われるエネルギーは、全米のエネルギー消費量の12%を占めている。
デイヴは現在、ヴィア・セパレーション(Via Separations)の最高経営責任者(CEO)を務めている。デイヴらが考案したテクノロジーは、今日、化学物質を分離するのに使われているシステム、簡単にいえば沸騰させて煮詰める方法の代わりになることを目指している。デイヴは、自社の濾過材が広範囲に採用されれば、従来の工業プロセスで使われるエネルギーの50〜90%程度を削減できると考えている。
ヴィア・セパレーションは現在、食品と飲料業界にフォーカスしている。もしこのテクノロジーが1つの産業でスケーラブルかつコスト効率が高いことを証明できれば、他の産業でも成功する鍵になるはずだ。
(ダン・ソロモン)
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| クレジット | Photograph by Simon Simard |
| 著者 | MIT Technology Review編集部 [MIT Technology Review Editors] |
