「手足だけ」で身体所有感、VR教育に新たな可能性
人間の脳は視覚による情報だけで意外と簡単に騙される。実質現実(VR)のゴーグルを付けて高いところから落ちる映像を見ると、本当に落ちているかのような恐怖とともに身体が宙を舞っているかのような浮遊感を感じる。実際には自分の身体ではないにも関わらず、VR空間では身体の動きと同期したアバターに「身体所有感」を感じてしまうのだ。
豊橋技術科学大学と東京大学、慶應義塾大学の共同研究チームが実施した実験によると、VR空間では「手袋と靴下」が自分の手足と同期して動いているだけでも、自分の身体だと感じることが明らかになった。実態が見えない透明人間の身体であっても、手足の動きが自分の身体と同じならば、身体所有感を錯覚するという発見である。
共同研究チームはこの発見によって、透明人間のアバターを技能伝承やスポーツ指導などに活用できると考えている。他人の手足の動きと自分の身体とを重ね合わせることで、まるで自分の身体が動いているように感じ、他人の複雑な動きを学習しやすくなるという。
VR研修は医療や接客などさまざまな現場で導入されており、エンターテインメント以外ではVRの主要な用途の1つとなってきている。今回の研究は、研修や教育分野でのVRの活用をさらに後押しするものになりそうだ。
- 参照元: https://www.tut.ac.jp/docs/PR180515.pdf