気温上昇「1.5℃目標」で20兆ドルの節約、スタンフォード大が試算
新しい研究によると、パリ協定で野心的な目標として設定された平均気温上昇を1.5℃以内に抑えることには、世界にとって、とてつもないメリットがあるという。
世界の平均気温上昇を、パリ協定の全体目標として掲げている2℃未満ではなく、1.5℃以内に抑えることを目標として各国が必要な活動をすると、全世界で20兆ドル以上の節約になる可能性が60%あるという。スタンフォード大学の科学者たちが5月23日付でネイチャーに公開した最新研究の結論である。
この金額は、1.5℃以内に抑える目標を達成するための排出ガス削減にかかるコストよりもはるかに大きい。事実、ある調査報告書では、そのために必要なコストを数千億ドルと見積もっている。平均気温が3℃上昇すると、さらに5%の打撃を全世界のGDP(国内総生産)に与える。
なぜこのような結果になるのだろうか? 今回の研究の共同執筆者であるノア・ディフェンバー教授が主導した以前の研究によると、温度が上昇するにつれ、破滅的な気象異常が発生する確率が急激に増加する。農業生産高の縮小や、より高い防波堤のような建造物の改造が、経済に大打撃を与える。
何十年も先の将来の気候変動が経済にどのような影響を及ぼすのか予測することは一般に困難である。しかし、今回の論文の筆頭著者であるマーシャル・バーク助教授は、MITテクノロジーレビューに対し、大規模な研究による予測では一貫して、気温上昇を抑えられれば「利益がコストを上回る」「より貧しい地域が、より多くの恩恵を受ける」という結論を得られていると電子メールで述べている。
不幸なことに、すでに排出されている温室効果ガスの量や現在の政治情勢を考慮すると、現在の排出量削減のペースでは、2℃の気温上昇も今やほとんど避けられないと考える研究者が増えている。ましてや1.5℃以内に抑えることなどとうてい無理だろう。
- 参照元: Nature