フェイスブックCEOが欧州議会で謝罪、「記念撮影」に応じる姿も
フェイスブックの最高経営責任者(CEO)が厳しい質問で火あぶりにされることを期待されていたが、実際にはご近所の気まずいバーべーキュー程度のものだった。
ザッカーバーグCEOは5月22日、欧州議会で証言をした。議員らはケンブリッジ・アナリティカのデータ・スキャンダルに関する回答を求めていた。スキャンダルとは、データ・ブローカーであるケンブリッジ・アナリティカ(Cambridge Analytica)がフェイスブック・ユーザー8700万人のプロフィールを不正に入手していた件だ。同時に、議員らは5月25日から実施されるGDPR(EU一般データ保護規則)と呼ばれるEUの新たなプライバシー規則に準拠する準備状況の報告を求めていた。
予想通り、ザッカーバーグCEOは、またまた謝罪の言葉を述べ、フェイスブックの責任について「十分に広い視野で認識できていませんでした」と話し、「利益の最大化よりも、常に人々の安全を守ることが何より重要です」と語った。 また、ユーザーのオンライン上での安全性を維持するために、フェイスブックが取り組んでいる手立てについて繰り返し述べた。
さらにザッカーバーグCEOは、フェイスブックはGDPRに準拠する準備はできていると話している。GDPRには企業がEU内に居住する人の個人データを利用する場合、本人の同意を求める規則が含まれている。
欧州議会による公聴会は4月に米国で開催された2回の公聴会に続くものだ。ザッカーバーグCEOが出席した米国の公聴会では、ユーザーのプライバシーからフェイスブックのビジネスモデルに至るまであらゆることを話し、計10時間を費やした。この公聴会の間、ザッカーバーグCEOは、しばしば議員の質問に対し自分の「チームの者」 が後ほど回答すると返答した。
だが、今回のEUでの公聴会は米国とは少し形式が異なっていた。米国の議員には好きなだけザッカーバーグCEOを質問攻めで火あぶりにする時間が与えられていた一方、 欧州議会では議員全員が一度に質問をし、ザッカーバーグCEOがまとめて回答する形式だった。
このような形式だったため、ザッカーバーグCEOは議員からの質問に対してまとめて回答した。「フェイスブックを取り巻く不適切なコンテンツに関しまして、何人かの議員の方からご質問を頂きましたが」、「選挙にまつわるご質問を多数頂戴しましたが」といったように、質問への回答をより曖昧にすることもできた。また、ザッカーバーグCEOは、フェイスブックは分割する必要があるほど大きな独占企業なのではないか、といった質問への回答は避けた(ザッカーバーグCEOは競争についてや、人はいかに「たくさんの異なるツール」をコミュニケーションに利用するかについては説明した)。
ケンブリッジ・アナリティカに関するデータ漏えいが単なる「氷山の一角」かどうかという質問に対し、ザッカーバーグCEOは次のように回答している。「フェイスブックが使用停止を求めるアプリは他にも見つかると予測しています」。なお、これまでにフェイスブックは200を超えるアプリの使用を停止している。
欧州議会議員の一部は、ザッカーバーグCEOの回答内容や一部質問への回答を避けたことに落胆している。ザッカーバーグCEOが質問をまとめ、一括して回答すると、ヒー・フェルホフスタット議員は「当然、何か事情があって、あなたがこのような形式を要求したんでしょうね」と発言し、ザッカーバーグCEOが質問に答えていないと不満を唱えた。
議員全員がザッカーバーグCEOに文句があるわけではなかった。質疑終了直後にザッカーバーグCEOと写真を撮るためにポーズを取る1人の議員の姿が、生中継映像に流れた。