KADOKAWA Technology Review
×
中国のAI国家計画で
「医療」が選ばれた理由
Courtesy of PereDoc
カバーストーリー Insider Online限定
AI could alleviate China’s doctor shortage

中国のAI国家計画で
「医療」が選ばれた理由

西側諸国に比べて圧倒的に医師の数が足りない中国は、医師不足をAIによって補おうとしている。4年後の市場規模は約9億ドルに達するとの予測もあり、多くのテック企業が自動化ツールを開発中だ。 by Yiting Sun2018.04.11

中国、北京西部にある病院でのある日のこと。がん放射線科医のチョウチョウ・ウーは、フォトショップによく似たコンピューター・プログラムに肺の放射線画像を読み込んだ。すると、数千もの検査例で訓練したニューラル・ネットワークが結節に赤い四角で目印を付け、それをウー医師が丁寧に検証していく。ウー医師は、ニューラル・ネットワークが誤って悪性腫瘍の可能性があると目印を付けた血管を2カ所訂正した。だが、これまで彼女が見逃していた結節も見つけた。おそらく、がんの初期兆候を示すものだ。

中国ではこうしたツールを使って、保健医療に人工知能(AI)を積極的に加える動きが始まっている。ここ最近、欧米でも見られる傾向だ。だが、中国では患者の個人データや新しいテクノロジーの利用に対する規制が厳しくないうえに、自動化の必要性が欧米よりも高い。米国では人口1000人に対して2.5人の医師がいるのに比べ、中国では1.5人にすぎないからだ。

中国の動きは速い。北京に拠点を置くコンサルタント会社ヨウ・インテリジェンス(Yiou Intelligence)によると、現在、131もの企業が中国国内の医療産業へAIを導入しようと取り組んでいる。北京のある病院では2018年5月から、すべての肺の検査結果をAIアルゴリズムに通し、診断時間の短縮を図る予定だ。

中国政府は2020年までにAI産業を発展させる大規模な計画の第1弾として、コンピューターで医療診断を支援するテクノロジーを求めている(「国家レベルでAIに賭ける中国から何を学ぶべきか」参照)。調査会社のIDCが2月に発表したレポートによると、中国のAI保健医療サービスの市場は2022年には9億3000万ドルに達する見込みだ。大手テック企業も市場を狙っている。アリババとテンセント(Tencent)には、AI診断ツールの開発に特化した研究部門がある。

中国国民がAIを受け入れることで、AIテクノ …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. What’s on the table at this year’s UN climate conference トランプ再選ショック、開幕したCOP29の議論の行方は?
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者決定!授賞式を11/20に開催します。チケット販売中。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る