大豆はOK、肉はNG?
遺伝子「編集」食品
揺れる規制線
米国で遺伝子編集した動物の安全性規制を緩和させるためのロビー活動が活発化している。ビジネスを優先させる姿勢を明確にしているトランプ政権は、規制を変更するのにまたとないチャンスだと業界関係者らは見ているのだ。 by Antonio Regalado2018.04.04
ミネソタ州のバイオテクノロジー企業であるリコンビネティクス(Recombinetics)のホームページには、「遺伝子編集革命はここにある」と宣言されている。
だが、その実現は厄介な規制がなくなった場合に限られるかもしれない。
同社は新種の精密な分子バサミによる遺伝子編集によって、都合の良い特性を持った家畜を作り出す。従来の遺伝子組み換えとは異なり、遺伝子編集は動物のDNAを変更するが、他の種のDNAを組み込むことはしない。
リコンビネティクスと提携企業はすでに遺伝子編集によって、角のない白黒のホルスタイン乳牛と性成熟期に達することのないブタを作った。性成熟させないことで、食肉として加工されたときに不快な匂いをもたらす「雄臭」を防げるのだ。
現在問題となっているのは、米国食品医薬品局(FDA)が動物のDNAの編集を医薬品のように規制し、厳しい安全性試験を要求するとしていることだ。リコンビネティクスはFDAに対して、ナンセンスだと抗議している。遺伝子編集で作る角のないウシは、生まれつき角を持たないウシと乳牛を異種交配させて得られるウシと同じだと主張しているのだ。
MITテクノロジーレビューは、業界関係者がドナルド・トランプ政権を味方につけて、問題を一気に解決しようと試みていることを把握した。動物の管轄機関をFDAから米国農務省(USDA)に切り替えてもらおうとしているのだ。USDAはすでに、遺伝子「編集」した植物は遺伝子「組み換え」の植物とは異なり、規制を受けずに栽培して販売できると定めている。バイオテクノロジー企業は、遺伝子編集したウシやブタも同じ扱いになることを求めている。
確かに、いい点を突いてはいる。遺伝子編集した大豆を、一連の安全性試験をせずに販売してもよいのなら、遺伝子編集したウシはなぜだめなのだろうか?
それができない理由は、米国の食品規制が時代錯誤の分類網になっているからだ。農業による改善の普及を目的として設立されたUSDAは、ほとんどの肉、生(未加工)の果物と野菜、加工(生でない)卵を検査する。保健福祉省の一部であるFDAは、魚(ナマズを除く)、鹿肉、遺伝子操作された動物(現在論点の中心となっているもの)を管轄する。当局が規制を施行する際の根拠となる法律は、遺伝子の検索・置換技術など想像もしていなかった人物によって何十年も前に作られていることが多い。
奇妙なことに、バイオテクノロジーの時代に入って40年も経つのに、いまだに適切な規制体系に関する合意には達していない。ある業界関係者によると、ワシントンDCの業界団体であるバイオテクノロジーイノベーション協会(Biotechnology Innovation Organization:BIO)は問題を検証するホワイト・ペーパーの作成を委託しているという。
バイオテクノロジー企業らは、それぞれの動物を、作り方ではなく本来のリスクによって判断してほしいと主張している。「過程ではなく製品」を規制すれば、業界は萎縮する。特に、遺伝子操作した動物には有無を言わさず安全性規制を課すべきだという現在の考えに、企業は納得していない。
ここでも、 …
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