KADOKAWA Technology Review
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New Self-Driving Car Tells Pedestrians When It’s Safe to Cross the Street

挨拶する自動運転車
人間中心設計と人工知能

自動運転車は、人間のドライバーや歩行者の予測不能な行動にどう応えるのか。 by Will Knight2016.08.31

自動運転車最大の課題は、他の車との接触を防いだり、機械がはじめて見る障害物をどう避けたりするかではなく、最も不規則で機械の混乱を招く現象である「人間の行動」に対処することだろう。

最近設立された自動運転のスタートアップ企業ドライブ.aiは、人間とのやりとりを戦略に組み込んでいる。ドライブ.aiはスタンフォード大学出身の人工知能の研究者が多く在籍しており、解析したセンサーデータで車両を制御するシステムを開発している。しかし、他社と異なるのは、ドライバーと歩行者の行動規範を自動車が学ぶ方法を模索していることだ。ドライブ.aiは、カリフォルニア州で歩行者に機械の意志を伝えるディスプレイと音響システムを装備した自律自動車のテストを数週間以内に開始する。

5年以内の登場が宣言された初期の自動運転車は、完全自律型とはほど遠くなる見込みであり、ドライブ.aiの取り組みは単なる研究にとどまらず、自動運転のあり方を決めるかもしれない(「完全ガッカリな自動運転実用化でも晴れの日専用?」参照)。

An illustration shows a car fitted with Drive.ai hardware.
ドライブ.aiのハードウェアを装備した自動車の想像図

「この業界の誰もが路上の自動車がすべて自動運転になる魔法の世界について話しています。ところが驚いたことに、人間の側は、設計の視野に入っていないのです」(ドライブ.aiのキャロル・ライリー共同設立者兼社長)

ジョンズ・ホプキンス大学で学んだライリー社長は、以前は医療用ロボットに関わっていた。ドライブ.aiが独特なのは、機械学習を運転と人間とのやりとりの両方に適用していることだという。ライリー社長は、車の列に割り込んだ後に謝ったり、交差点に進入させてもらったらお礼をしたりする、人間のドライバーの日常的なコミュニケーションは、自動運転になると全く変わってしまうことに着目している。

The Drive.ai team.
ドライブ.aiチーム

「私たちは、自動運転自動車の普及によって、人間の振る舞いが変わってしまうと考えています」と、ライリー社長はいう。自動運転自動車もそれぞれの場面でふさわしく行動する必要があるだろうが、何が一番よい方法なのかを把握するには時間がかかると、補足した。

「しかし結局のところ、当社が信じているのは、私たちが人間を自動運転の要素のひとつと当初から認めることです。どうすれば自動車と人間がよりよく関わり合えるか、答えを見つけないといけません」

ドライブ.aiの最初の製品は、従来車を自動運転に改造するためのハードウェアで、配達やタクシーサービスなど、特定のルートに沿って車両を運行させる会社に提供される。自動車制御用のセンサーとシステム一式には、屋根に取り付ける通信システムと新開発の車載インターフェイスが含まれる。

ドライブ.aiは、テキスト、音、ライト、自動車の動作によって、ドライバーや歩行者とコミュニケーションする実験を予定している。車載ディスプレイにより、歩行者に道路を横断しても安全だと知らせたり、交差点で車をやや乗り出すように停車したりすることで、直交車線のドライバーに入れてほしいと伝えられる。ドライブ.aiのシステムが使用する 深層学習は、人間によるプログラムでは実装が困難なタスクを機械に教えるのに、非常に有効だと証明されている手法だ。

マサチューセッツ工科大学(MIT)で自動化とドライバーの行動について研究しているブライアン・ライマー研究員は、自動運転システムの開発者は人間の行動にほとんど注意を払ってこなかったという。

「多くの重要なテクノロジー企業が現在焦点を当てている感知と処理の問題はすぐにも解決されますが、人間中心設計の概念に沿って考えるのは時間がかかるでしょう。より高度に自動化された車種が多く登場していく一方で、現実の道路では、今後何十年にもわたって、低レベルの自動化システムを搭載した自動車ばかりのはずです」

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ウィル ナイト [Will Knight]米国版 AI担当上級編集者
MITテクノロジーレビューのAI担当上級編集者です。知性を宿す機械やロボット、自動化について扱うことが多いですが、コンピューティングのほぼすべての側面に関心があります。南ロンドン育ちで、当時最強のシンクレアZX Spectrumで初めてのプログラムコード(無限ループにハマった)を書きました。MITテクノロジーレビュー以前は、ニューサイエンティスト誌のオンライン版編集者でした。もし質問などがあれば、メールを送ってください。
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