気候変動が形成する悪循環、
頻発する異常気象と自然災害
2017年は気候変動による異常気象やそれに伴う災害が頻発した年だった。しかも、被害の規模は大きくなる一方だ。気候変動によって起こる現象は互いに関係して相乗効果のフィードバック・ループを形成しているので、今すぐに抜本的な手を打たないと、悪循環から抜け出すことはますます困難になるだろう。 by James Temple2018.04.17
ここ何十年にもわたって科学者たちは、気候変動によって干ばつや洪水、ハリケーンなどの異常気象や山火事が頻繁になり、被害も大きくなると警告してきた。2017年に人々は世界の凶暴化を目の当たりにすることになった(「カリフォルニア州で過去最悪の山火事、気候変動も影響か」を参照)。巨大なハリケーンが米国東部とメキシコ湾岸地方に壊滅的被害をもたらし、風にあおられた山火事が米国西部を焼き焦がした。
このような異常気象は互いに関連しており、相乗効果によって気候が危険な転換点に向かっていることがはっきり分かってきている。しかし、リスクが増大し、これまで何十年もこのようなリスクと向き合い続けているにも関わらず、まだ有効な手は打てていない(「Trump’s Five Biggest Energy Blunders in 2017」を参照)。
実際のところ、気候政策や世界協定、太陽光発電の進展、風力発電プラント、ハイブリッド自動車、電気自動車などの対策にも関わらず、温室効果ガスの排出量は今も増え続けている。温室効果ガスを排出する限り、問題は悪化するばかりだ。
2017年に起こった最も心配な気象的現象を、以下に5つ挙げてみた。
温室効果ガスの排出量が再び増加
グローバル・カーボン・プロジェクト(Global Carbon Project)によると、化石燃料と産業からの温室効果ガスの排出量は、比較的横ばいの状態が3年続いた後、2017年に再び約2パーセントの上昇を見せた。この変化は中国とインドの二酸化炭素汚染が引き起こしたもので、米国の排出量がわずかに減少したのを上回った。
このニュースによって、近年の排出量横ばい状態がトレンドになるのではないかという一時の望みは打ち砕かれた。何よりも、気候に対する総合的な努力が温室効果ガスの増加を止められなかったということだ。しかも、温室効果ガスを根本的に減らさなければならない時点であるにも関わらずだ。国連の気候変動に関する政府間パネル(UN Intergovernmental Panel on Climate Change)によれば、気温の上昇が危険レベルである2度を超えないようにするには、21世紀半ばまでに温室ガス排出量をなんと70パーセントも削減しなければならない。
大気中の二酸化炭素濃度はすでに400ppm以上だ。この値が危険レベルをすでに大きく超えていることは、地球温暖化や氷冠融解、異常気象を見れば明らかだ。
2017年11月初旬、世界気象機関(World Meteorological Organization)は、2017年は「観測史上3位以内の暖かい年」であり、エルニーニョ現象の影響を受けない年としてはもっとも暖かい年になりそうだと発表した。このため、2013~2017年は、5年間の世界平均気温が観測史上最も高い期間となった。
二酸化炭素は大気中に何千年も残り、その温室効果が最大に達するまでに約10年かかる。すなわち、これまで色々な変化を目にしてきたが、2008年から毎年排出されてきた二酸化炭素の影響をまだ完全には体験していないのだ。二酸化炭素が1トン排出されれば、気候変動の危険性がそれだけ増え、経済的・環境的・人命的な損害が拡大する。
最悪のシナリオにますます現実性
ネイチャー誌に掲載された気候変動モデルと現実の大気変化を比較した2017年12月の研究によれば、今世紀の地球温暖化に関して、最も強い警鐘を鳴らした予測が最も現実に近いようだ(「地球温暖化の最悪シナリオの現実性が高まる、米研究所が検証」を参照)。
その論文は、21世紀末には世界中の温度が5度近く上昇すると結論付けている。これは国連の気候変動に関する政府間パネルが出した「通常通りの企業活動」での温室効果ガス排出シナリオに基づく前回の中間的な予想を15パーセント上回っている。
論文の筆者たちは「大気圏最上部」の衛星観察データを10年分以上集めた。そして …
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