KADOKAWA Technology Review
×
ビットコインとは
何だったのか?
カバーストーリー 無料会員限定
What Bitcoin Is, and Why It Matters

ビットコインとは
何だったのか?

サトシ・ナカモトと名乗る人物がビットコインの論文を2008年に発表して10年近く経った。ビットコインは現在、おそらく開発者たちが想定していた以上のブームになっている。ビットコインが一般に知られるようになった2011年のMITテクノロジーレビューの記事で、基礎的な仕組みと当時の見解を振り返ってみよう。 by Tom Simonite2017.12.13

ビットコインは他の通貨と異なり、政府による保証があるわけではない。ビットコインを保証するのは賢い暗号化スキームだ。

現時点(2011年5月25日)で、ビットコインで買えるものはほとんどない。この新しい通貨であるビットコインがドル通貨と競合するのはかなり先の話になるだろう。この解説記事では、ビットコインとは何なのか、なぜ重要なのか、ビットコインが成功するためには何が必要なのかを紐解く。

※この記事はMITテクノロジーレビュー米国版で2011年5月25日に公開されたものです。いくつかの個所で現状についての注釈を編集部が追加しています。

ビットコインの開発者

2008年、サトシ・ナカモト(偽名が通説とされている)というプログラマーが暗号に関するメーリングリストにビットコイン構想の概要に関する論文を発表した。その後、2009年前半に、その人物がそのスキームを使ってビットコイン取引に使うソフトウェアを発表した。そのソフトウェアは現在(2011年5月25日時点)、4人のコア開発者が取りまとめをするボランティアのオープンソース・コミュニティによって運営されている。

「サトシは少し謎めいた人物ですね」と、コア開発者の一人でビットコイン経済を追跡・観察するビットコイン・ウォッチ(2017年12月時点ではビットコインチャーツ(Bitcoincharts)が価格や相場の情報を掲載している)の創業者であるジェフ・ガルジックはいう(ジェフ・ガルジックは2015年にブロックチェーン関連企業のブロック(Bloq)を共同創業し、最高経営責任者(CEO)を務めている)。「他のコア開発者も私も、たまにサトシとメールしていますが、返信があるかどうかはいつも賭けなのです。メンバー全員、サトシとはメールやフォーラムでやり取りをするだけの関係です」と、ガルジックはいう。

ビットコインの仕組み

ナカモトは、銀行やペイパル(PayPal)などの第三者機関がなくても、電子的に安全な金銭取引ができるようにしたいと考えていた。送り主に信用がない場合でも、受け取った通貨が本物であると確認できる暗号技術をビットコインの基礎としたのだ。

ビットコインの基礎知識

ビットコインのクライアント・ソフトをダウンロードして起動すると、クライアント・ソフト(以降、クライアント)はインターネットを介して全ビットコイン・ユーザーがつながる分散型ネットワークに接続する。そして、クライアントに固有の、数学的に関連付けられたペアの鍵を生成する。ユーザーは個々に割り当てられたこれらの鍵を使うことで、他のクライアントとビットコインの取引ができる。

ペアの鍵のひとつは「秘密鍵」と呼ばれ、他人には非公開で、ユーザーのコンピューターに秘匿される。もうひとつは「公開鍵」と呼ばれる。公開鍵を使って生成したビットコイン・アドレスを他のユーザーに伝えれば、ビットコインを受け取ることができる。重要なのは、最速のスーパーコンピューターを使っても、公開鍵から秘密鍵を算出するのは現実的には不可能だということだ。このため、他者になりすますことができないようになっている。公開鍵と秘密鍵は別のコンピューターに転送できるようにファイルに格納されており、たとえば、コンピューターをアップグレードしても使い続けられる。

ビットコイン・アドレスは、「15VjRaDX9zpbA8 …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. What’s on the table at this year’s UN climate conference トランプ再選ショック、開幕したCOP29の議論の行方は?
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者決定!授賞式を11/20に開催します。チケット販売中。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る