10倍速いデスクトップ3Dプリンター、MIT教授らが開発
この映像は早送りではない。マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者が作成した新型デスクトップ3Dプリンターの映像なのだ。巷にある類似の3Dプリンターに比べ、10倍の速さで矢継ぎ早にプラスチック製品を作り出す。
MITのジョン・ハート教授と大学院生のジャミソン・ゴーは、現存のデスクトップ3Dプリンターがなぜこれほど遅いのかを突き止め、解決策を示す論文をアディティブ・マニュファクチャリング誌に発表した。
ハート教授らによると、3Dプリントに時間がかかるのは、形成機構の動く速さ、プリンターから射出される素材を押し出す力、機械の加熱能力の低さなどに主な原因があるという。ハート教授らの機械は、レーザー、特殊なネジと高速ガントリー(構台)を使うことで、こういった問題を改善する。特殊なネジの仕組みによって、プリンターのノズルからポリマー素材を押し出す力がひとケタ強まり、レーザーが素材を急速に加熱している間に、プリンターのノズルに押し込む。
さらに、プラスチックの配置を迅速にガイドする機構により、超高速3Dプリンターを作り出したというわけだ。「1時間もかけず、5分から10分でブラケットやギヤのプロトタイプ部品を手に入れたり、大型部品を翌日まで待たなくても昼休み中に手に入れたりできます。これまでよりずっと速く設計し、作り上げ、試験ができます」(ハート教授)。
ハート教授は、3Dプリントの速度向上技術で知られている。教授が共同創設したデスクトップ・メタル(Desktop Metal)は、MITの2017年版スマート・カンパニー50にランク入りしており、来年度、100倍の速さで金属部品の3Dプリントができる3Dプリンターの市販に乗り出す予定だ(「MIT教授陣が関わる金属3Dプリンターがついに登場」を参照)。
残る問題点は、スピードが加速したことで、機械が次のプラスチックの薄層を積み重ねるまでに下の層が固まりきらないという点だ。これにより、製品にゆがみが生じることもあり得る。ハート教授たちは現在、プリントの過程で素材を冷却する方法を研究している。