24カ国以上で政府がネット世論を操作、人権団体が指摘
ソーシャルメディアにあるのはもはや、子猫の写真や政治的なパロディだけではない。政府が選挙に干渉し、民主主義の崩壊を助長する道具になっていると、国際的な人権団体であるフリーダム・ハウス(Freedom House)の最近のレポートが指摘している。
レポートによると、2016年中に米国を含む少なくとも18カ国で、ソーシャルメディアを通して選挙が操作されたことが明らかになった。また、捏造された情報の拡散が7年間にもわたって世界中のインターネットの自由を妨げ、人権活動家やジャーナリストに暴力的な攻撃を与える要因にもなったとも書かれている。
昨年の米国大統領選、そして英国のEU離脱(Brexit)でのロシアの干渉は、すでに十分に裏付けがされている。だが、フリーダム・ハウスのレポートは、国レベルの選挙を操作しようとしたのが外国勢力だけではないことを明らかにしている。トルコ、ベネズエラ、フィリピン、その他の24カ国以上が、国内に「意見形成者」を作り上げ、政府の論点を拡散し、反対派を黙らせた。こういった方法でオンラインの議論を方向付けしようとしている国の数は、フリーダム・ハウスが2009年に追跡を始めてから年々増加しているという(上の図は、フリーダム・ハウスが作成したインターネットでの自由が保証されている国を表す)。
レポートは、中国やロシアのような国では、プロパガンダを拡散したりサイトを閉鎖したりするために、オンラインの軍隊を少なくとも10年間使ってきたと指摘している。加えて、ボットやアルゴリズムなどの自動化されたシステムによって、民主主義を阻害する新しい方法が次々と作り出されている。これらは追跡が困難で、まだ実態は判明していない。
いくつかの国で動きがある。EUはねつ造ニュースと戦う専門家グループを創設するとともに、偽情報に対処するための意見を求めている。ドイツは特別の対策を講じ、今年実施された選挙を前に、選挙システムが他国から干渉されないことを確認した。
さらに思い切った方法をとっている国もある。ソマリア北西部で独立を宣言しているソマリランド共和国は、近々行われる選挙期間中、十数個ものソーシャルメディア・サイトを封鎖しようとしている。人権団体のヒューマン・ライツ・ウォッチは、ソーシャルメディアが自由で公平な選挙に必要だと警告している。しかし、ソマリランドは、大量の作り話がウィルスのようにオンラインに広がってしまった今、この戦法が必要だと確信しているようだ。
- 参照元: Freedom House