KADOKAWA Technology Review
×
ニュース Insider Online限定
First Evidence That Offshore Wind Farms Are Changing the Oceans

洋上風力発電所は生態系にどう影響? 意外な結果が明らかに

洋上風力発電所の建設や建設計画が増え、巨大な構造物が海の生態系に与える影響が懸念されている。発電所の土台を住処とするムール貝が増えることで、カニや魚が集まり、それらを捕食するためにアザラシがやって来るかもしれない。 by Emerging Technology from the arXiv2017.09.25

洋上風力発電所はますます一般的なものになりつつある。欧州では、2030年までにヨーロッパ大陸の電気の4%以上を洋上風力発電で供給する目標が立てられている。この目標が風力発電ブームの引き金となり、風力で生み出される発電量は2030年までに40倍に増えると予測されている。

洋上風力発電のタービンは巨大で、地上にある風力発電のタービンよりもかなり大きい。ときには、高さ200メートル(ロンドンのビッグ・ベン時計台の2倍)を超え、最大9メガワットの電力を生み出す。しかし、その質量の大半は、水中に鎮座するコンクリートと鋼鉄でできた土台部分にある。

当然ながら、それらの土台は複雑な生態系の生息地となる。欧州の発電所のほとんどが建てられている北海では、ムール貝が海洋の生態系を支配している。ムール貝は海水から植物プランクトンを濾過して食べている。ムール貝はまた、魚や蟹などの他の海洋動物の食料源になっているため、食物連鎖を大きく変える可能性があるのだ。

そこで重要な問題が浮かび上がる。数々の洋上風力発電所とそれらが育むムール貝の新しいコロニーは、どのように海を変えていくのだろうか。

ドイツのヘルムホルツ・センター・フォー・マテリアルズ・アンド・コースタル・リサーチ(Helmholtz Centre for Materials and Coastal Research)のカエラ・スラヴィクと数名の仲間による研究が、この問いに一つの答えを与えてくれる。スラヴィクたちは洋上風力発電所が海の生態系に与える影響に関する初の研究を実施して、明確な結論を得た。洋上風力発電所の土台は、海の生態系の性質を複雑かつ思いがけない、そして有益なかたちで変化させているという。

用いた手法は単純明快だ。洋上風力発電所によって引き起こされている海の生態系の現在の変化を測定し、将来の変化を予測できるモデルをコンピュータ上で作成することが研究の目標である。

最初に、 …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. Who’s to blame for climate change? It’s surprisingly complicated. CO2排出「責任論」、単一指標では語れない複雑な現実
  2. Who’s to blame for climate change? It’s surprisingly complicated. CO2排出「責任論」、単一指標では語れない複雑な現実
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者決定!授賞式を11/20に開催します。チケット販売中。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る