原発産業の復興なるか?
米国初の小型原子炉建設へ
計画の長期化、莫大な資金投下が問題となり、大規模な原子炉の計画が困難になる中、米国初となる小型原子炉を12基、建設する計画が始まった。プロジェクトが成功すれば、原子力発電所建設の初期費用とリスクを軽減でき、停滞する原子力産業を再び、少しでも前進させられるかもしれない。 by James Temple2017.07.20
原子力産業が原子炉の小型化に大きな期待を寄せている。
2017年初め、ニュースケール・パワー (NuScale Power) は、アイダホ州アイダホフォールの郊外に広がる大規模な研究キャンパス、アイダホ国立研究所の敷地内に12基の小規模な原子炉を建設する長期的な計画を開始した(「Shrinking Nuclear」を参照)。米国原子力規制委員会 (Nuclear Regulatory Commission=NRC)が、600メガワットの発電所の設計を検討する正式なプロセスの開始を承諾したのだ。600メガワットは、アイダホ州の州都であるボイシ市に必要な電力の2倍以上にあたる。
これにより、オレゴン州ポートランドに拠点を置くニュースケール・パワーは、米国内初となる商用SMR(small modular reactor、小型原子炉)の建設において優位な立場に立った。SMRは、何十年にもおよぶNRCの承認に漕ぎ付ける、新しい原子炉設計を代表する実質的に最初の事例となる。
しかし世界では、ずっと多くのSMRプロジェクトが進行中だ。 国際原子力機関 (International Atomic Energy Agency=IAEA)によると、開発段階や計画段階にある設計やコンセプトが現在、世界中に約50 ある。アルゼンチン、ロシア、中国では、そのうちの4つがすでに建設が進んでいる段階にある。
初期プロジェクトの小型原子炉が建設されて成功を収めれば、より小型でより安全とされる小型原子炉を、ミニプラントとして量産できる可能性が高まり、初期費用とリスクを大幅に削減できる。プロジェクトの成功はさらに、気候変動のリスク低下に欠かせないと多くの専門家が考えるカーボン・フリー・エネルギー(二酸化炭素を出さないエネルギー)供給源のより容易な確保にもつながる。
一方で、発電所の実際の経済性は、稼働するまでわからない。より小型の原子炉をより多く作ることで、新たな種類の危険性が高まるかもしれないと警告を発する関係者もいる。
商業用SMRの大きな利点は、工場で前もって製造し、目的地に出荷できるだけのコンパクトさを持ち合わせていること、そして、積み重ねれば、必要なエネルギーをいくらでも生成できることだ。SMRはいずれ、10億ドルのコスト超過と長年の遅延が当たり前になっている原子力産業に、新しいレベルの予測可能性、信頼性、スケールメリットを生み出すかもしれない。本格的な原子炉では採算が合わないような小規模市場や、軍事的・産業的な用途に、原子力発電を利用する可能性も出てくる。
目下の利点は、安く建設できるということだ。本格的な原子炉を新たに建設するために必要な大規模な初期資本の調達は、米国でますます困難になってきている。ジョージア州とサウスカロライナ州にある2つ …
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