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製造業復活に逆効果のトランプ関税、「愚か」で片付けていいか?
Sarah Rogers/MITTR | Photos Getty
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Sweeping tariffs could threaten the US manufacturing rebound

製造業復活に逆効果のトランプ関税、「愚か」で片付けていいか?

トランプ大統領が国内の製造業を復活させるために導入を進める関税は、その狙いに反し、製造業の回復を妨げるだけでなく、米国の経済とテクノロジーの未来に壊滅的な影響を与える可能性がある。 by David Rotman2025.04.30

この記事の3つのポイント
  1. トランプ大統領の広範な関税政策は米国製造業の回復にダメージを与える可能性がある
  2. 関税は製造業への投資を凍結させ不確実性を高めるため再工業化を頓挫させかねない
  3. 米国の製造業は新技術開発に不可欠だが関税政策はその進歩を破壊しかねない
summarized by Claude 3

米国のドナルド・トランプ大統領が国際商品に対する広範な関税を発表したことで、地政学的混乱と市場崩壊が引き起こされている。それにもかかわらず、一部の支持者たちはいまだに、この戦略が米国産業界の「黄金時代」を生み出すと期待している。トランプ大統領自身、「雇用と工場が私たちの国に轟音を立てて戻ってくる」と主張している。

非常に的を絞った関税が、国内製造業の一部新興部門の保護に役立つ可能性はあるものの、効果の薄い関税の力を信じることは、製造業の現実に反している。そしてそれは、もうもうと煙を吐き出す工場のおかげで経済力がすぐに回復するという考え方だけに言えることではない。大量のアイフォーン(iPhone)を急に安価に組み立てられるようになるという信じがたい考え方もまた、現実的ではない。この包括的な関税措置は、今日のサプライチェーンの複雑さや、テクノロジーの進歩によって商品を製造する方法や場所が変化しているという事実を無視している。

実際のところ、トランプ政権が打ち出した高率の大雑把な関税は、米国製造業の最近の回復にダメージを与えかねない。工場や工場を稼働させるためのサプライチェーンの構築には、何年もの着実な投資が必要であり、場合によっては何十年もかかることさえある。その一方で、関税は、多くが海外から調達されている重要な供給品のコスト上昇という、即時的な影響力を持つ。それが価格の上昇を助長し、結果として需要が減退する。

そのいずれも、米国製造業への投資を計画している者たちにとって好ましいことではない。

「関税は、一般的に言って、米国で望まれている種類の製造業を振興する手段としては、ひどい方法です」。マサチューセッツ工科大学(MIT)の実務教授であるエリザベス・レイノルズは言う。

バイデン政権下で製造業と経済開発に関するアドバイザーを務めていたレイノルズ教授によれば、トランプ関税は米国製造業のコストを押し上げる一方で、「国家と経済の安全保障のために重要だと考えられるテクノロジーへの戦略的投資」に対する意欲を喚起しないという。

ハーバード・ビジネススクールのウィリー・シー教授は、関税が製造業やサプライチェーンにダメージを与えることについて、「無差別な暴力行為」のように感じると話す。これまでに提案された関税は「非常に一貫性がなく、とても頻繁に変更される」ため、「基本的に投資を凍結させています」とシー教授は言う。「物事がこれほど急速に変化しているときに、どんな種類の投資だろうと、約束する者などいるでしょうか?」

広範な関税導入の見通しが、米国製造業の好況に悪影響を及ぼしている可能性を示す兆候がすでに現れている。厳しくチェックされる調査の1つである購買担当者景気指数(PMI:Purchasing Managers’ Index)は、関税によって製造業のコストが上昇するという、懸念される初期の兆候を示した。ニューヨーク連邦準備銀行(連銀)やリッチモンド連銀、フィラデルフィア連銀が実施した製造業調査など、政策専門家たちが注視している他の指標も、米国生産者の間に広がる自信の喪失や、新規受注および雇用の減少を示している。

関税の長期的な影響は、言うまでもなく、未知数である。関税の規模や期間、対象国などの具体的な内容が常に変化しているように見えるためだ。そしてこのことは、問題の大きな部分を占めている。製造業者や投資家にとって不確実性は、事業拡大や新工場の建設、さらには新製品のために投入する …

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