トランプ関税、気候テックに大打撃 「冬の時代」到来か
トランプ政権による経済不安の広まりとクリーン・エネルギー関連補助金の先行き不透明感から、気候テック業界の不安が増している。業界における投資や雇用に、すでに影響が出ているという報告もある。 by James Temple2025.04.07
- この記事の3つのポイント
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- トランプ大統領の関税発表で世界的な貿易戦争と景気後退の危険性が高まった
- 米国のクリーンテック部門は景気後退の影響を特に受けやすい状況だ
- 政策の不確実性と経済悪化で企業がクリーンテック投資を控える恐れがある
ドナルド・トランプ大統領が広範かつ大規模な関税を発表したことで、2025 年4月3日の株式市場は世界的に大荒れとなった。世界的な貿易戦争が現実のものとなり、厳しい景気後退の危険性が高まっている。
米国のクリーンテック部門は、深刻な景気後退の影響を特に受けやすい。そのため、温室効果ガス排出量削減の進展が脅かされ、重要な成長産業であるクリーンテック部門における米国の指導的立場が弱まることを専門家らは懸念している。
「クリーンテックや気候テックで、大きなリスクに直面していない部門を思い浮かべるのは難しいでしょう」と、コロンビア大学グローバルエネルギー政策センターの上級研究員で、ジョー・バイデン大統領の下で経済諮問委員会の委員を務めたノア・カウフマン博士は語る。
「現時点で米連邦政府に気候戦略がないことと、経済が悪い方向に向かっていることを考えると、楽観的になる根拠はあまりないと思います」。
実際、クリーンテックや気候テックの分野全体で、課題が山積し、リスクが増大している。トランプ関税による経済変化の影響がどれほど深刻かつ広範囲に及ぶかは、多くの要因と、まだはっきりとしない関税に対する対応に左右される。特に、電気自動車(EV)やバッテリー生産、その他のクリーン・エネルギー支援に対する補助金の行方を左右するのは、議会で進行中の予算交渉である。これらのプログラムの多くは、バイデン前大統領肝入りの気候変動対策法である「インフレ抑制法(Inflation Reduction Act)」によって確立されたものだ。
先行き不透明な政府支援に加えて、経済全体が減速すれば、二酸化炭素除去、航空機向け合成燃料、電気配送車など、企業が気候変動対策目標を達成するのに役立つテクノロジーに取り組んでいるスタートアップ企業に対し、企業やベンチャーキャピタルは資金提供を引き締める恐れがある。
さらに、現在54%までに引き上げられた中国製品に対する関税を中心に、トランプ大統領が設定した関税は多くの企業の主要部品のコストを押し上げることになる。特に、米国は2024年1〜4月の間に中国から40億ドル相当のリチウムイオン電池を輸入しており、関税引き上げはEV、ノートPC、携帯電話、その他多くの機器に搭載される製品に巨額の税金を課すことになる。
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