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セメントは世界で最も広く使用されている材料の1つである。しかし、その製造過程は気候変動に大きく影響を及ぼし、世界の温室効果ガス排出量の約7%を占めている。
コディ・フィンケ(34歳)は、この問題に取り組むため、ブリムストーン(Brimstone)という企業を共同設立し、従来のセメントと同じ特性を持ちながら、より環境負荷の少ないセメントを開発した。
現在、最も一般的に使用されているのはポルトランド・セメントである。このセメントは、石灰岩を高温で加熱して製造するが、その過程で大量の二酸化炭素(CO₂)が排出されてしまう。
フィンケは、この問題を解決するために、石灰岩の代わりにケイ酸塩岩を使用してポルトランド・セメントを製造する方法を考案した。この新しいプロセスでは、石灰岩を加熱することで発生するCO₂排出を回避できる。
ブリムストーンのプロセスでは依然として高温の窯(キルン)を使用する必要があるため、エネルギー消費量が大きく、完全に排出ゼロにはならない。しかし、フィンケは、動力に再生可能エネルギーを使用すれば、セメントの製造を完全にゼロエミッション化できると述べている。
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JOSE ROMERO
また、フィンケは開発の際にポルトランド・セメントと同じ特性を持たせることを最優先した。建設業界では新しい材料がリスクと見なされるため、既存の建築プロジェクトで採用されにくいからである。さらに、コスト面でも既存のセメントと競争できるよう設計されている。
フィンケは2019年にブリムストーンを共同設立し、現在は最高経営責任者(CEO)を務めている。2024年3月には、米国エネルギー省(DOE)から1億8900万ドルの助成金を獲得し、セメントの量産体制を確立する計画を進めている。この資金を活用し、同社は最初の商業プラントを建設する予定で、将来的には年間14万トンのセメントと副産物の生産を目指している。
セメントの製造によるCO₂排出量は、乗用車の排出量と同程度とされている。しかし、フィンケによると、セメント業界は投資家からの注目や資金支援を受ける機会が少ないという。
「気候変動に関心があるなら、セメントにも関心を持つべきです」とフィンケは強調する。
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