KADOKAWA Technology Review
×
【3/14東京開催】若手研究者のキャリアを語り合う無料イベント 参加者募集中
35歳未満のイノベーター35人 2024医学/生物工学
私たちの身体や脳の働きについて、まだ多くのことが解明されていない。病気の本質を探求し、技術がどのように私たちの寿命を延ばし、より健康的な生活を実現できるかを模索しているイノベーターたちを紹介する。

Mireille Kamariza ミレイユ・カマリザ (34)

所属: カリフォルニア大学ロサンゼルス校

結核菌の新しい検査方法を考案。検査時間を1時間未満に短縮した。

ミレイユ・カマリザ(34歳)は、結核菌を迅速かつ低コストで検出し、薬剤耐性の有無も確認できる新しい診断法を開発した。この手法は、現在広く使われている検査よりもはるかに高速で、診断結果が得られるまでの時間を大幅に短縮する。

結核は年間約130万人の命を奪う感染症であり、新型コロナウイルス(COVID-19)を除けば、最も致死率の高い感染症とされている。しかし、現在発展途上国で広く用いられている標準的な検査方法は、100年以上もほとんど変わっていない。これは、医師が喀痰(たん)のサンプルを顕微鏡で観察し、細菌の有無を確認するというものであり、結果が出るまで数週間かかるうえ、必ずしも正確とは限らない。

カマリザの検査法は、彼女が開発した特殊な色素を利用している。この色素は、生きた結核菌の細胞壁に取り込まれると蛍光を発する。さらに、彼女はこの色素を、結核菌がエネルギー源として利用するトレハロース(糖の一種)に結合させることで、生きた細菌だけを識別できる仕組みを考案した。つまり、染色したトレハロースを喀痰サンプルの結核菌に与えると、わずか数分で蛍光を発する。さらに、患者に抗生物質を投与し、数時間後に再び検査すれば、細菌がまだ生存しているかどうかをすぐに確認できる。

この画期的な手法は、数十年前から知られている基本的な化学・生物学の概念に基づいている。しかし、「この化学反応が診断技術に応用できると気づくのが難しかった」とカマリザは言う。「誰も真剣に考えたことがなかったと思います。実現は困難でした」。

カマリザは、この技術を研究室から実用化へと移行させるために、利益追求ではなく公共の利益を優先する企業を共同創業した。現在、臨床試験を進める一方で、彼女のチームはこの色素が血液サンプルにも適用可能であることを証明し、より安全で広く利用できる診断方法の実現を目指している。

「この色素は、異なる糖に結合させることで、さまざまな細菌、ウイルス、寄生虫、さらには宿主細胞自体を標的にできる可能性があります」とカマリザは語る。「将来的には、がん細胞を検出することもできるかもしれません」。

人気の記事ランキング
  1. AI crawler wars threaten to make the web more closed for everyone 失われるWebの多様性——AIクローラー戦争が始まった
  2. Promotion Innovators Under 35 Japan × CROSS U 好評につき第2弾!研究者のキャリアを考える無料イベント【3/14】
  3. From COBOL to chaos: Elon Musk, DOGE, and the Evil Housekeeper Problem 米「DOGE暴走」、政府システムの脆弱性浮き彫りに
  4. What a major battery fire means for the future of energy storage 米大規模バッテリー火災、高まる安全性への懸念
  5. A new Microsoft chip could lead to more stable quantum computers マイクロソフト、初の「トポロジカル量子チップ」 安定性に強み
人気の記事ランキング
  1. AI crawler wars threaten to make the web more closed for everyone 失われるWebの多様性——AIクローラー戦争が始まった
  2. Promotion Innovators Under 35 Japan × CROSS U 好評につき第2弾!研究者のキャリアを考える無料イベント【3/14】
  3. From COBOL to chaos: Elon Musk, DOGE, and the Evil Housekeeper Problem 米「DOGE暴走」、政府システムの脆弱性浮き彫りに
  4. What a major battery fire means for the future of energy storage 米大規模バッテリー火災、高まる安全性への懸念
  5. A new Microsoft chip could lead to more stable quantum computers マイクロソフト、初の「トポロジカル量子チップ」 安定性に強み
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る