KADOKAWA Technology Review
×
始めるならこの春から!年間サブスク20%オフのお得な【春割】実施中
資金流入で競争加速、
2025年のロボット開発は
どう動く?
Stephanie Arnett/MIT Technology Review | Boston Dynamics, Agility AI
人工知能(AI) 無料会員限定
What’s next for robots

資金流入で競争加速、
2025年のロボット開発は
どう動く?

人型ロボットの実用化テストが本格化し、AIを活用した新たな学習手法も登場。2025年は実験室から現場へと活躍の場を広げるロボットの価値が問われそうだ。 by James O'Donnell2025.01.29

この記事の3つのポイント
  1. 人型ロボットが物流などの現場で試験運用され始めたが課題も残る
  2. ロボットはAIやシミュレーションを活用し想像力から学習できるようになった
  3. 軍事用途を中心にロボットの物理的な能力も大きく進化している
summarized by Claude 3

ヤン・リップハルトは、スタンフォード大学で准教授として生物工学を教えているが、カリフォルニア州ロスアルトスの多くの人々にとっては、4本足のロボット犬を通りで散歩させている奇妙な男として知られている。

リップハルト准教授は長年にわたってロボットの開発や改良を続けており、彼が公共の場に「犬」を連れ出すと、たいてい3つの反応のいずれかが返ってくる。幼い子どもは欲しがり、親は気味悪がり、ベビーブーム世代は無視しようとする。「彼らは『ここでは一体どんな馬鹿げた新しいことが行われているんだ?』という感じで、さっと通り過ぎます」とリップハルト准教授は言う。

私はこれまで多くの人々とロボットについて議論してきたが、大半の人は3つのグループに分かれる傾向があると気づいた(ただし、必ずしも年齢ごとに明確に分かれるわけではない)。第1のグループは、料理から手術に至るまで、現在人間が担っている多くの作業を機械が巧みにこなす未来がすぐそこまで来ていると楽観的に考え、期待を寄せる人々だ。第2のグループは、失業や事故など、ロボットと共存する中で生じうる問題を懸念する人々である。

第3のグループ(私の考えでは、おそらく最大のグループ)は、単に無関心な人々だ。1961年にニュージャージー州のゼネラルモーターズ(GM)工場で最初のロボットアームが組み立てラインに導入されて以来、「ロボットが社会を変革する」という約束を人々は何度も耳にしてきた。しかし、これまでのところ、そうした約束が実現した例はほとんどない。

しかし今年は、これまでかたくなに「無関心」であった人々でさえ、ロボット開発競争で何が起きているのかに興味を引かれるかもしれない。この記事では、注目すべきロボット開発の動向を紹介しよう。

テストにかけられる人型ロボット

人型ロボットの開発競争は、「世界は人間の形態に合わせて設計されている」という考えに基づいており、人間の動きを自動化することは、ロボット工学にとって大きな変革をもたらす可能性がある。この競争をリードしているのは、特に率直な意見を持つ楽観的な起業家たちだ。人型ロボットを開発する企業「フィギュアAI(Figure AI)」の創業者でありCEO(最高経営責任者)であるブレット・アドコックもその一人だ。同社の企業評価額は26億ドルを超え、BMWと共同でロボットのテストを開始している。アドコックCEOは最近、タイム(TIME)誌のインタビューで「いずれ肉体労働は人間にとって不要なものになるだろう」と語った。

テスラのイーロン・マスクは、人型ロボット「オプティマス(Optimus)」の開発を進めており、「人型ロボットが貧困のない未来を実現する」と述べている。さらに、ロボット工学企業「イライザ・ウェイクス・アップ(Eliza Wakes Up)」は、42万ドルの人型ロボット「イライザ(Eliza)」の予約注文を受け付けている。

2024年6月、アジリティ・ロボティクス(Agility Robotics)は、自社開発の人型ロボット「ディジット(Digit)」の一団を、ナイキやネスレをはじめとするさまざまな企業の物流を担うGXOロジスティクス(GXO Logistics)に導入した。この人型ロボットは、パレットの積み下ろしや箱のコンベアへの積み込みなど、物を持ち上げて別の場所に運ぶ作業のほとんどをこなすことができる。

課題もある。鏡面仕上げのコンクリート床では、ロボットが滑りやすくなる可能性がある。また、ロボットを円滑に稼働させるには、施設内に良好なWi-Fi環境が必要だ。しかし、より大きな問題は充電である。アジリティ・ロボティクスが提供しているDigitの現行モデルは、約18キログラムのバッテリーを搭載しており、1時間の充電で2〜4時間稼働する。そのため、シフトごとに充電済みのロボットと入れ替えながら運用するのが一般的だ。設置された充電ドックの台数が少ない場合、一部の施設が稼働していない夜間にロボットが自律的にドック間を移動しながら充電することも理論的には可能だが、ロボット …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
【春割】実施中!年間購読料20%オフ!
人気の記事ランキング
  1. Promotion MITTR Emerging Technology Nite #32 Plus 中国AIをテーマに、MITTR「生成AI革命4」開催のご案内
  2. AI companions are the final stage of digital addiction, and lawmakers are taking aim SNS超える中毒性、「AIコンパニオン」に安全対策求める声
  3. What is vibe coding, exactly? バイブコーディングとは何か? AIに「委ねる」プログラミング新手法
  4. Tariffs are bad news for batteries トランプ関税で米電池産業に大打撃、主要部品の大半は中国製
▼Promotion
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版

本当に長期的に重要となるものは何か?これは、毎年このリストを作成する際に私たちが取り組む問いである。未来を完全に見通すことはできないが、これらの技術が今後何十年にもわたって世界に大きな影響を与えると私たちは予測している。

特集ページへ
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る