資金流入で競争加速、
2025年のロボット開発は
どう動く?
人型ロボットの実用化テストが本格化し、AIを活用した新たな学習手法も登場。2025年は実験室から現場へと活躍の場を広げるロボットの価値が問われそうだ。 by James O'Donnell2025.01.29
- この記事の3つのポイント
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- 人型ロボットが物流などの現場で試験運用され始めたが課題も残る
- ロボットはAIやシミュレーションを活用し想像力から学習できるようになった
- 軍事用途を中心にロボットの物理的な能力も大きく進化している
ヤン・リップハルトは、スタンフォード大学で准教授として生物工学を教えているが、カリフォルニア州ロスアルトスの多くの人々にとっては、4本足のロボット犬を通りで散歩させている奇妙な男として知られている。
リップハルト准教授は長年にわたってロボットの開発や改良を続けており、彼が公共の場に「犬」を連れ出すと、たいてい3つの反応のいずれかが返ってくる。幼い子どもは欲しがり、親は気味悪がり、ベビーブーム世代は無視しようとする。「彼らは『ここでは一体どんな馬鹿げた新しいことが行われているんだ?』という感じで、さっと通り過ぎます」とリップハルト准教授は言う。
私はこれまで多くの人々とロボットについて議論してきたが、大半の人は3つのグループに分かれる傾向があると気づいた(ただし、必ずしも年齢ごとに明確に分かれるわけではない)。第1のグループは、料理から手術に至るまで、現在人間が担っている多くの作業を機械が巧みにこなす未来がすぐそこまで来ていると楽観的に考え、期待を寄せる人々だ。第2のグループは、失業や事故など、ロボットと共存する中で生じうる問題を懸念する人々である。
第3のグループ(私の考えでは、おそらく最大のグループ)は、単に無関心な人々だ。1961年にニュージャージー州のゼネラルモーターズ(GM)工場で最初のロボットアームが組み立てラインに導入されて以来、「ロボットが社会を変革する」という約束を人々は何度も耳にしてきた。しかし、これまでのところ、そうした約束が実現した例はほとんどない。
しかし今年は、これまでかたくなに「無関心」であった人々でさえ、ロボット開発競争で何が起きているのかに興味を引かれるかもしれない。この記事では、注目すべきロボット開発の動向を紹介しよう。
テストにかけられる人型ロボット
人型ロボットの開発競争は、「世界は人間の形態に合わせて設計されている」という考えに基づいており、人間の動きを自動化することは、ロボット工学にとって大きな変革をもたらす可能性がある。この競争をリードしているのは、特に率直な意見を持つ楽観的な起業家たちだ。人型ロボットを開発する企業「フィギュアAI(Figure AI)」の創業者でありCEO(最高経営責任者)であるブレット・アドコックもその一人だ。同社の企業評価額は26億ドルを超え、BMWと共同でロボットのテストを開始している。アドコックCEOは最近、タイム(TIME)誌のインタビューで「いずれ肉体労働は人間にとって不要なものになるだろう」と語った。
テスラのイーロン・マスクは、人型ロボット「オプティマス(Optimus)」の開発を進めており、「人型ロボットが貧困のない未来を実現する」と述べている。さらに、ロボット工学企業「イライザ・ウェイクス・アップ(Eliza Wakes Up)」は、42万ドルの人型ロボット「イライザ(Eliza)」の予約注文を受け付けている。
2024年6月、アジリティ・ロボティクス(Agility Robotics)は、自社開発の人型ロボット「ディジット(Digit)」の一団を、ナイキやネスレをはじめとするさまざまな企業の物流を担うGXOロジスティクス(GXO Logistics)に導入した。この人型ロボットは、パレットの積み下ろしや箱のコンベアへの積み込みなど、物を持ち上げて別の場所に運ぶ作業のほとんどをこなすことができる。
課題もある。鏡面仕上げのコンクリート床では、ロボットが滑りやすくなる可能性がある。また、ロボットを円滑に稼働させるには、施設内に良好なWi-Fi環境が必要だ。しかし、より大きな問題は充電である。アジリティ・ロボティクスが提供しているDigitの現行モデルは、約18キログラムのバッテリーを搭載しており、1時間の充電で2〜4時間稼働する。そのため、シフトごとに充電済みのロボットと入れ替えながら運用するのが一般的だ。設置された充電ドックの台数が少ない場合、一部の施設が稼働していない夜間にロボットが自律的にドック間を移動しながら充電することも理論的には可能だが、ロボット …
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