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SHINSUKE SUGINO
IU35 Japan Summit 2024: Hiroshi Ito

「深層予測学習でロボットとAIのギャップを埋める」伊藤 洋

MITテクノロジーレビュー「Innovators Under 35 Japan Summit 2024」から、日立製作所/早稲田大学所属の伊藤 洋氏のプレゼンテーションの内容を要約して紹介する。 by MIT Technology Review Japan2025.01.10

MITテクノロジーレビューは2024年11月20日、「Innovators Under 35 Japan Summit 2024」を開催した。Innovators Under 35は、テクノロジーを用いて世界的な課題解決に取り組む若きイノベーターの発掘、支援を目的とするアワード。5 回目の開催となる本年度は、国内外で活躍する35歳未満の起業家や研究者など10名のイノベーターを選出した。

その受賞者が集う本サミットでは、各受賞者が自らの活動内容とその思い、今後の抱負を3分間で語った。プレゼンテーションの内容を要約して紹介する。

伊藤 洋(日立製作所/早稲田大学) 

ドラえもんや鉄腕アトムのようなロボットがいたらいいな、と思ったことはありませんか?  科学技術の進歩によって、高性能な音声認識や物体認識を行なうAI、そして優れた身体機能を持つロボットが開発されています。しかし、これらを組み合わせるだけで、汎用的なロボットを作ることはできるのでしょうか。そこには大きな課題が存在します。

その1つが「モラベックのパラドックス」です。人間にとって簡単な作業でも、AIやロボットにとっては非常に困難な場合があります。例えば、ドアを開ける動作一つとっても、ドアノブの位置や大きさによって力の加え方や動かし方が異なり、環境変化に対する柔軟な対応が必要となります。一方で、チェスのような複雑な戦略を要する課題は、AIにとって比較的容易です。このギャップを埋めるところに、汎用ロボットを実現する鍵が隠されています。

私たちの研究チームは、環境変化に対してロバストかつ柔軟な動作を実現する「リアルタイムなロボット制御AI深層予測学習」を開発しています。この技術は3つのステップで構成されます。まず遠隔操作でロボットに動作を教え、その際のカメラ画像やセンサーデータを収集します。次に、得られたデータを用いて数時間のモデル学習を行ないます。最後に、学習したモデルをロボットに実装することで、環境変化に対応した自律的な動作が可能になります。例えば、初めて見るパステルカラーのドアでも、過去に開けた茶色のドアの経験を活かして作業を実行できます。

この技術は、ドアの開閉だけでなく、柔軟物体の操作や複雑な組み立て作業など、多様な場面での活用が可能です。人手不足は今や世界的な課題になっています。特に、医療や介護分野での深刻な労働者不足に対して、熟練作業のノウハウや知識をロボットに学習させることで解決策を提供したいと考えています。これまでロボット技術は公共空間で多く用いられてきましたが、これから私は人々の生活環境へと拡大していきたいです。

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