バブル崩壊も騒がれたEV市場、2025年はどうなる?
2024年のEV市場は、伸び率が鈍化する一方、世界販売台数は1700万台を突破し、史上最高を記録した。2025年も20%増と堅調な成長が予測されるが、米国市場は次期政権次第だ。 by James Temple2025.01.07
2025年は、電気自動車(EV)の堅調な拡大が予測される年となりそうだ。ただし、米国での売上は、次期政権の政策選択に大きく依存するだろう。
世界的には、EVをはじめとするクリーンな車両やトラックが、引き続きガソリン車の市場シェアを侵食し続けるだろう。その背景には、コストの低下、消費者の選択肢の拡大、充電ステーションの普及がある。
2024年にはEV市場の成長鈍化に関する騒ぎが絶えなかった。それでも、市場調査会社ブルームバーグNEFによれば、2024年の世界のバッテリーEV(BEV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)の売上は史上最多の約1700万台に達したとみられ、さらに2025年には前年比約20%増が予測されている。
さらに、多くの自動車メーカーが、世界各地のショールームに向けて多様な廉価モデルを提供する準備を進めている。これにより、今後2〜3年の間に、自動車由来の石油需要と温室効果ガス排出量のいずれもがピークを迎える可能性が高い。
正確を期すならば、EV売上の伸び率が鈍化しているのは事実である。多くの地域の消費者が、より安価なモデルや、より便利な充電ソリューションを待っているためだ。
中国、ドイツ、ニュージーランドなどの一部の国々が、低排出車の普及を加速させていた補助金を削減したことも、成長の鈍化に影響を与えた。それに加えて、ドナルド・トランプ次期米大統領が選挙キャンペーン中に公約したとおり、EVへの政府補助金を廃止し、関税障壁を設けるならば、生産や購入コストが上昇し、EV業界にとっては大きな打撃となるだろう。
業界の専門家や気候科学者は、いま進めるべきはその逆の政策であると主張している。気候変動を抑制するための現実的な戦略の中核は、2050年までに内燃機関自動車を完全に置き換えることである。ブルームバーグNEFが指摘するように、規制を強化したりEVへの支援を拡大したりしなければ、世界はこの目標を達成する軌道には乗れないという意見が大勢を占めている。
「私たちは自動車メーカーに圧力をかけなければなりません。同時に、彼らにインセンティブや研究開発、インフラを提供して支援する必要もあります」と、カリフォルニア大学デイヴィス校のEV研究センター(EV Research Center)所長、ジル・タルは語る。
しかし、最終的にはEV売上の行方は、特定地域における個別のダイナミクスに左右される。以下では、この業界の今後を決める世界3大市場、すなわち米国、EU(欧州連合)、中国の動向について解説する。
米国
米国のEV市場は矛盾に満ちている。
一方では、全米で多くの企業が、バッテリー(電池)、EV、充電装置の工場建設や生産能力拡大に数百億ドルを投じている。今後数年のうちに、ホンダはオハイオ州でEV生産用に転用した組立ラインの操業を開始し、トヨタはケンタッキー州の基幹工場で電気SUVの生産に着手し、ゼネラルモーターズ(GM)は2023年末に製造を終了した前世代のボルト(Bolt)から復活した新型ボルトをカンザス州で生産開始する予定だ。このほかにも、数十の工場が計画中または建設中である。
こうした計画は、クリーンな自動車の生産コストを下げ、消費者の選択肢を増や …
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