米国で処方急増、GLP-1薬のダイエット以外の用途とは?
糖尿病治療薬として開発されたGLP-1受容体作動薬が、減量薬として米国で人気になっている。米国の処方箋の5.4%を占めるまでに急成長。処方増加に伴い患者データの分析が進み、アルツハイマーやアルコール依存症の治療でも効果が期待されるようになった。 by Antonio Regalado2024.12.24
- この記事の3つのポイント
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- もともとは糖尿病治療薬だったGLP-1受容体作動薬の処方が米国で急増
- 減量目的が人気だがそれ以外にもさまざまな効果が期待されている
- アルツハイマー病や依存症、睡眠時無呼吸症、長寿への効果が研究されている
米国の医師たちは、毎年何十億枚もの処方箋を書いている。しかし、2024年はある1種類の薬の処方が突出していた。一部では「奇跡の薬」と呼ばれる、GLP-1受容体作動薬である。
健康データ企業のトゥルベータ(Truveta)によれば、2024年9月時点で米国の成人向けに発行された処方箋の20枚に1枚が、GLP-1受容体作動薬に関連するものだった。
「ウゴービ(Wegovy)」「マンジャロ(Mounjaro)」「ビクトーザ(Victoza)」などの商品名で販売されているGLP-1受容体作動薬は、インスリンの生成を助けるため、もともとは糖尿病の治療に使用されていた。しかし、この薬が脳に「空腹ではない」と信号を送ることを科学者たちが発見したことで、人気が急上昇した。空腹を感じさせる合図がなければ、体重を10%以上減らすことができると人々が気づいたのである。
トゥルベータの主任応用科学者であるトリシア・ロドリゲスによれば、2024年中にこの薬の人気は過去最高に達した。トゥルベータは、米国の人口の約3分の1に当たる1億2000万人分の医療記録を分析している。
「2024年9月の時点で、成人向けの全処方薬のうち5.4%がGLP-1受容体作動薬でした」。ロドリゲス主任は説明する。この割合は、1年前の2023年の3.5%、さらには2021年初頭の1%から増加している。
同社のデータによれば、このような薬の処方箋を受け取る人々は、若者や白人が多く、特に女性の割合が高い。実際、女性が処方箋を受け取る割合は男性の2倍に達している。
とはいえ、処方された全員が実際にこの薬を受け取るわけではない。ロドリゲス主任によれば、肥満症のために書かれた新しい処方箋の半分は調剤されていないという。
これは非常に珍しいことであり、品不足や、治療費の高さに患者が驚いたことが原因と考えられる。多くの保険会社は減量薬を保険適用の対象としておらず、USAトゥデイ紙によると、自己負担額は月額1300ドルにもなる場合がある。
「ほとんどの薬の場合、処方率と調剤率はほぼ一致しています」とロドリゲス主任は述べている。「しかし、GLP-1受容体作動薬では、このような非常にユニークなギャップが …
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