米中貿易戦争、新局面に
重要鉱物の対米禁輸を解説
中国政府は12月3日、半導体や電気自動車などに使われるガリウムなど複数の重要鉱物について、米国向け輸出を禁止すると発表した。米国による対中輸出規制の強化への報復措置で、世界の2大経済大国による貿易戦争が新たな段階に入った。その影響と予測される動きを解説する。 by James Temple2024.12.11
12月3日、中国政府は複数の重要鉱物の米国への輸出禁止を発表した。世界最大の2つの経済大国間で激化する、報復的な貿易制限措置の最新の動きである。
半導体、防衛、電気自動車などの分野にとって戦略的に重要な材料の輸出を、単に制限するのではなく明確に断ち切ったことで、一触即発の状態が長く続いていた貿易戦争において中国は明らかに新たな一線を越えたと言える。
同時に、中国が輸出禁止に選定した鉱物は、いずれの産業にも致命的な打撃を与えないよう配慮されたものだった。これにより中国は、トランプ次期政権がさらなる貿易制限を課した場合に、より大きな経済的打撃を負わせるための十分な余地を残したことになる。
トランプ次期大統領は最近、すべての中国製品に10%の追加関税を課すことを公約。選挙期間中は、60%から100%という高い関税率を提案していた。一方、ハイテク産業に不可欠な多くの重要鉱物のサプライチェーンで支配的立場にある中国は、強力な報復措置をとる用意があるというメッセージを送っているように見える。
「これは、中国にその力があることを示すサインなのです」。ワシントンDCを拠点とする超党派の非営利研究団体「戦略国際問題研究センター」で重要鉱物安全保障プログラム担当理事を務めるグラセリン・バスカランは言う。「銃弾が発射されたのです」。
この決定に至った背景は?
中国の発表の直前、バイデン政権は同国に対し、最先端の兵器システムや人工知能(AI)などに使われる先端半導体の開発を助ける可能性があるチップやその他のテクノロジーに、さらなる輸出制限を課すことを決定している。
バイデン大統領は大統領任期中を通して、中国の軍事力、技術開発、増大する経済力を抑制することを目的に、一連の輸出規制を徐々に強化しながら実施してきた。しかし、調査会社トリヴィウム・チャイナ(Trivium China)のコーリー・コムズ副部長によると、今回の輸出規制強化は、中国が国家安全保障を守る能力、あるいはより先端的なテクノロジーの生産に転換する能力を脅かすものだという。「中国にとって、越えてはならない明確な一線を越えるものでした」。
コムズ副部長は、「中国政府がどこに自国の利益があると感じているか、非常によく分かる動きです」と話す。
中国は具体的に何を禁止したのか?
ニューヨーク・タイムズ紙によれば、米国の新たなチップ輸出規制に対し、中国は直ちにガリウム、ゲルマニウム、アンチモン、そして製造業で広く使われるいわゆる「超硬度材料」の輸出を禁止した。これらの鉱物は、軍事用途と民生用途の両方の用途で使われており、中国はその大半についてすでに米国への輸出を制限していた。
中国は、電気自動車(EV)や送電網向け蓄電設備、家電製品などに使われるリチウムイオン電池のアノード(負極)材料の大半を占める黒鉛(グラファイト)の販売も、さらに制限する可能性があると述べている。
輸出禁止によって何が起こるのか?
専門家は、今回の輸出禁止措置が大きな経済的影響を与える可能性は低いとの見解を示す。その理由の1つは、中国がすでに数カ月前からこれらの鉱物の輸出を制限しているためだ。また、それらの鉱物が使用されるのは、半導体産業の中でも特定の用途に限定されるため、 …
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