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2026年の稼働目指す、コモンウェルスの核融合施設へ行ってみた
Commonwealth Fusion Systems
Inside a fusion energy facility

2026年の稼働目指す、コモンウェルスの核融合施設へ行ってみた

コモンウェルス・フュージョン・システムズは、2026年までの稼働開始を目指して商業用核融合炉の建設を進めている。工事は順調に進んでいるように見受けられるが、やるべきことがまだたくさん残っているのは確かだ。 by Casey Crownhart2024.11.12

この記事の3つのポイント
  1. コモンウェルスは2026年までに核融合実証炉スパークを稼働させる計画
  2. スパークには高温超伝導体テープを使った独自の強力な磁石が用いられる
  3. 商業化にはいまだ多くの課題が残されているが着実に前進している
summarized by Claude 3

この記事は米国版ニュースレターを一部再編集したものです。

10月上旬のある曇り空の日、私はレンタカーを借りてマサチューセッツ州デベンズへ向かった。地面に掘られた穴を訪れるためだ。

コモンウェルス・フュージョン・システムズ(Commonwealth Fusion Systems)は2018年にマサチューセッツ工科大学(MIT)からスピンアウトして以来、20億ドル以上を資金調達している。そのすべてが、初の商業用核融合炉を建設するためのものだ。同社は発電所建設の野望を持っているが、現在は、最初の実証システムとなる「スパーク(SPARC)」原子炉の組み立て完了を目標にしている。計画では、2026年までに稼働開始することを見込んでいる。

その進捗を確認するため、私は最近、コモンウェルスの作業現場を訪れた。スパークが最終的に設置される床の穴周辺で、組み立て工事は順調に進み始めている。敷地内を見渡すと、核融合エネルギーを実際に取り入れた未来像が、よりイメージしやすくなってきていることに気づいた。 しかし、まだたくさんのやるべきことが残っている。

核融合発電は、数十年来の夢である。アイデアは簡単だ。原子をまとめてぶつけ、放出されるエネルギーを利用して世界に電力を供給するのである。このシステムは、豊富にある燃料をほんの少しだけ必要とし、危険な廃棄物は発生しない。問題は、このビジョンの実行が、多数の人々の期待よりもはるかに遅いペースでしか進んでいないことだ。

コモンウェルスは、商業用核融合を牽引する企業のうちの1社である。本誌のジェームス・テンプル編集者は、同社がこのテクノロジーの実現に取り組んでいることについて特集記事を書き、2022年に公開した。当時、デベンズではスチールやコンクリートの地面への埋め込みが始まったばかりで、建設現場はまだ泥だらけの状態だった。

今では、そこははるかに洗練されている。10月に訪れたときに私は、見学者用の指定駐車スペースのひとつに車を停め、賑やかなオフィスビルの受付でチェックインしてから見学を開始した。見どころは主に2つ、稼働中の磁石工場と、スパーク原子炉を収容してサポートする一連の建物である。

見学は磁石工場から始まった。スパークは、強力な磁石を使って閉じ込めたプラズマで核融合反応を起こす、トカマク型装置だ。スパークで使われる磁石は3種類あり、そのすべてがプラズマを適切な位置に保ち、正しい方向へ動かすように設置される。

コモンウェルスは、高温超伝導体から作られたテープで電力を供給する独自の磁石を製造している。この磁石は、電流を流すと磁場を生成する。スパークの磁石には、このテープが数千キロメートル使用されることになる。工場では、専用機器が巻き上げた高温超伝導体テープを収納した金属ケースを、積み重ねて保護シェルへと溶接する。

磁石工場を簡単に見て回った後は、ヘルメット、ネオンベスト、安全メガネを装着して安全性に関する短い説明を受けた。溶接を直接見つめないようにという厳しい警告もあった。その後、中庭を横切って砂利道を下り、スパーク原子炉を収容する主要な建物群に向かった。

残っていた合板の階段とほこりを除けば、複合施設は完成間近に見えた。建物の前面にあるのは、巨大なガラス張りの壁だ。ガイド役だった最高マーケティング責任者(CMO)のジョー・パルスカは、内部で起こっていることについて、コミュニティにオープンであることを示すための作りだと説明した。

中央のトカマクホールの周囲には、4つの主要な建物が配置されている。それらの建物には、磁石の冷却、プラズマの加熱、原子炉の状態測定に必要な支援機器が収納されている。トカマク運用所長のアレックス・クリーリーから見学後に電話で受けた説明によると、スパークを支えるこうした大規模な産業用システムのほとんどは、稼働の準備がほぼ整っているか、積極的な設置が進んでいるとのことだった。

スパークが設置されるトカマクホールの見学がついに始まるというところで、私たちは曲がりくねった順路をたどって建物へ入らなければならなかった。コンクリート壁の迷路から入り口に通されたときには、右も左も分からなくなっていた。これは原子炉の稼働中に迷走中性子がホールから漏れないようにするための設計で、迷宮と呼ばれる安全機能である(中性子は放射線の一種であり、多量の被曝は人間にとって危険になる可能性がある)。

そしてようやく、洞窟のような空間に足を踏み入れた。私たちは、金属製通路の高い位置から、つやつやの白い床に機器が散らばった部屋を見下ろした。中央には、防水シートで覆われ、明るい黄色の手すりで囲まれた穴があった。その空っぽの空間に、この部屋の主役となるスパークが最終的に設置される。

tokamak hall at Commonwealth Fusion Systems
コモンウェルス・フュージョン・システムズのトカマクホールには、同社のスパーク原子炉が収容される。
COMMONWEALTH FUSION SYSTEMS

トカマクホールには、現時点ではまだ、ほんのわずかなトカマクしか設置されていない。しかしコモンウェルスは、野心的なタイムラインを計画している。2026年までにスパークの稼働を開始し、最初のプラズマを原子炉に入れるというのがその目標だ。同社は2027年までに、原子炉が稼働に必要とする以上のエネルギーをそこで生産できると実証する計画を立てている。核融合の世界でQ>1として知られるマイルストーンの達成である。

コモンウェルスに関する記事を2022年に公開したときは、2025年までに原子炉を稼働させてQ>1のマイルストーンに到達する計画だった。つまり、当初のタイムラインはずれ込んでいる。 ほぼすべての業界において、大規模なプロジェクトに想定より時間がかかることは珍しくない。とはいえ、核融合に関しては、問題をはらんだ約束マイルストーン未達の歴史が特に長いのだ。

コモンウェルスは確かに、この数年間で前進している。そのため、同社が実際に原子炉を稼働させ、この分野が何十年にもわたって取り組んできたマイルストーンを達成することは、想像しやすくなってきている。しかし、マサチューセッツ州の郊外では今も、トカマクの形をした穴は空っぽのままだ。

MITテクノロジーレビューの関連記事

コモンウェルス・フュージョン・システムズと、同社の核融合エネルギー商業化への道のりについては、こちらの2022年の特集記事をご覧いただきたい。

2022年後半、米国の国立研究所にある原子炉が業界で初めて、投入されたよりも多くのエネルギーを作り出した。このマイルストーン達成が、クリーン・エネルギーにとって実際に何を意味するのかを知るにはこちらをどうぞ。

核融合には、未だ多くの研究が必要とされている。次に注目されているのがこちら。

ヘリオン(Helion)と呼ばれる別の会社は、同社初の核融合発電所を5年後に開設予定と発表している。専門家は控えめにいっても懐疑的だ


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AI e-waste

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ケーシー・クラウンハート [Casey Crownhart]米国版 気候変動担当記者
MITテクノロジーレビューの気候変動担当記者として、再生可能エネルギー、輸送、テクノロジーによる気候変動対策について取材している。科学・環境ジャーナリストとして、ポピュラーサイエンスやアトラス・オブスキュラなどでも執筆。材料科学の研究者からジャーナリストに転身した。
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