KADOKAWA Technology Review
×
【冬割】 年間購読料20%オフキャンペーン実施中!
真面目すぎるAI、賢いロボットの秘訣は「サボり上手」
Stephanie Arnett / MIT Technology Review | Envato
人工知能(AI) Insider Online限定
To be more useful, robots need to become lazier

真面目すぎるAI、賢いロボットの秘訣は「サボり上手」

ロボットを賢く有用な存在にするカギは、人間と同じような「怠け者」にすることにあるという。こうした考えに基づいて開発されたロボットが、ロボットサッカー大会で優勝を収めた。 by Rhiannon Williams2024.09.13

この記事の3つのポイント
  1. ロボットは周囲のデータを効率的に扱うことで性能が向上する
  2. レイジー・ロボット工学は不要なデータの優先順位を下げることを目指す
  3. ロボカップでは「怠け者」戦術を採用したチームが優勝した
summarized by Claude 3

ロボットは人間とはまったく異なる方法で周囲の世界を認識する。

通りを歩いているとき、私たちは、何に注意を払う必要があり、何に注意を払う必要がないか分かっている。通り過ぎる車、潜在的な危険、邪魔になる障害物などには注意を払う必要があるし、遠くを歩いている歩行者などには注意を払う必要がない。一方、ロボットは、周囲について受け取るすべての情報を同等の重要性で扱う。たとえば、無人乗用車は、重要であるかどうかにかかわらず、周囲の物事に関するデータを絶え間なく分析しなければならない。そうすることで、車を運転している人たちや歩行者の安全が確保されるのだが、そのためには多くのエネルギーと計算能力が必要になる。ロボットに、何を優先すべきで何を無視しても安全かを教えることにより、その負荷を軽減する方法があったらどうだろうか?

これが、オランダのアイントホーフェン工科大学のルネ・ファン・デ・モレングラフト教授が提唱する「レイジー・ロボット工学(Lazy Robotics、レイジーは「怠惰な」という意味)」という研究分野の根底にある考えだ。同教授は、あらゆる種類のロボットに、データに対して「怠け者」になるように教えることで、機械が人間をはじめとする現実世界の環境にある物事と、よりうまくやりとりする道が拓かれると考えている。基本的に、ロボットが情報をより効率的に扱えれば扱えるほど、それはより優れたものになる。

ファン・デ・モレングラフト教授のレイジー・ロボット工学は、研究者やロボット工学企業が、うまく柔軟に、そして可能な限り最も効率的に動作を完了できるよう、ロボットを訓練する際に現在採用しているアプローチの1つにすぎない。

ロボットが収集したデータをより賢くふるいにかけ、見過ごしても問題ないデータの優先順位を下げるように教えることで、ロボットをより安全で信頼性の高いものにすることができる。これはロボット工学コミュニティの長年の目標である。

ロボットがより広く採用されるためには、このようなタスクの簡素化が必要であるとファン・デ・モレングラフト教授は言う。現在のロボットのエネルギー使用量では拡張性がなく、法外な費用がかかり、環境にも悪影響を与えるからだ。「最高のロボットは怠け者のロボットだと思います」と同教授は話す。「ロボットは、人間と同じように、デフォルトでは怠け者であるべきです」。

怠け者になることを学ぶ

ファン・デ・モレングラフト教授は、こうした取り組みを試す面白い方法を思いついた。ロボットにサッカーを教えるというものだ。先日、同教授は自分の大学の自律ロボット・サッカーチームであるテック・ユナイテッド(Tech United)を率いて、「ロボカップ(サッカー場でロボットのスキルをテストする毎年恒例の国際ロボット工学・AIコンテスト)」で優勝した。サッカーはロボットにとって難しい挑戦だ。ゴールを決めるのもゴールをブロックするのも、すばやい制御された動き、戦略的な意思決定、協調性が求められるからだ。

最高のサッカー選手のように、集中して周囲の雑音を遮断することを学ぶことで、ロボットはエネルギー効率が向上(特にバッテリー駆動のロボットの場合)するだけでなく、ダイナミックで動きの速い状況でより賢明な判断を下せる可能性が高くなる。

テック・ユナイテッドのロボットは、ロボカップで対戦相手より優位に立つために、「怠け者」の戦術をいくつか使った。その1つのアプローチには、試合中ずっと変わらないサッカー場のレイアウトとラインマークを識別・マッピングして、サッカー場の「世界モデル」を作成することが含まれていた。こうすることで、バッテリー駆動のロボットは、貴重な電力を浪費につながる周囲の絶え間ないスキャンをする必要がなくなる。さらに …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
【冬割】実施中! 年間購読料20%オフ!
人気の記事ランキング
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者決定!授賞式を11/20に開催します。チケット販売中。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る