送電網に潜む温暖化の脅威、SF6の代替技術は間に合うか?
送電網の安定に不可欠なSF6(六フッ化硫黄)は、CO2の2万倍もの温室効果を持つ。各国が使用禁止へ動く中、代替技術の開発が急務だ。新たな絶縁ガスや超臨界CO2など、さまざまな技術が模索されているが、実用化までの道のりは険しい。 by Casey Crownhart2024.09.25
- この記事の3つのポイント
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- 強力な温室効果ガスであるSF6は送電網の絶縁に使用されている
- SF6の使用禁止の動きがEUなどを中心に世界的に広がっている
- 代替として超臨界CO2などの研究が進められている
送電網は、ある1種類のガスに支えられている。さまざまな高電圧装置の絶縁に使われるガスだ。問題は、そのガスがとても強力な温室効果ガスであること、つまり気候変動にとっての悪夢でもあるということだ。
六フッ化硫黄(SF6)は、地球を温暖化させる最も一般的なガスとは大きく異なり、これまでのところ温暖化には1%ほどしか寄与していない。温室効果ガスとしては二酸化炭素やメタンの方がはるかに有名で、大気中に大量に存在する。しかし、他の多くのフッ素化ガスと同様に、SF6は特に強い効果がある。SF6は二酸化炭素の約2万倍のエネルギーを1世紀を超えて閉じ込め、大気中で1000年以上存続する可能性がある。
これまでのところ温暖化に寄与する割合は比較的小さいものの、このガスの排出量は増加の一途をたどっており、増加率は年々上昇している。中国のSF6排出量は2011年から2021年にかけてほぼ倍増しており、現在は世界のSF6排出量の半分以上を占める。
現在、各企業はSF6に依存する装置を廃止し、このガスの性能に匹敵する代替品を探している。日立エナジーは先月、SF6を他の材料に置き換えた新しい装置を発表した。また、欧州連合(EU)では最近、2032年までに高電圧装置でのSF6の使用を段階的に禁止していく計画が可決されるなど、電力業界でSF6を排除する機運が高まっている。
装置メーカーが代替品の製造に取り組んでいるところ、さらに進んでフッ素含有材料を完全に避ける方法の発見を目指すべきだと主張する研究者たちもいる。
高電圧、高リスク
おそらくあなたの家にも、分電盤があるだろう。過剰な負荷がかかると、ブレーカーが落ちて電気の流れが止まる。送電網にも、同じような役目を果たす開閉器という装置がある。
違いを挙げると、開閉器は家庭用装置のおよそ100万倍のエネルギーにに対応しなければならない点があると、日立エナジーのハイボルテージプロダクツビジネスユニット担当役員を務めるマルクス・ハイムバッハは言う。送電網の部品は、可能な限り損失を抑えながらエネルギーを送り届けられるように、高電圧で動作しているためだ。このような …
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