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テクノロジーの未来を知りたい? ネオジムに注目してみよう
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Want to understand the future of technology? Take a look at this one obscure metal.

テクノロジーの未来を知りたい? ネオジムに注目してみよう

今後100年間について考えるとき、真っ先に頭に浮かぶのは材料のことだ。どんな材料が必要になるのか? 十分な量はあるのか? 重要な問題を答えを見出すヒントが、ネオジムだ。 by Casey Crownhart2024.09.03

この記事の3つのポイント
  1. ネオジムは将来の技術に不可欠な希土類金属である
  2. ネオジムの需要増加に伴い供給面の制約が予想される
  3. 技術の進展により必要とされる材料と開発される技術に関係がある
summarized by Claude 3

この記事は米国版ニュースレターを一部再編集したものです。

今年の春から夏に差し掛かろうかという時期の、ある快晴の朝のことだ。私は米国自然史博物館で、やや地味な見た目の岩石の数々を注意深く観察していた。

私はこれまで記者として、高度な水処理プラントから試験的な原子炉まで、最先端の技術を何度も目にしてきた。博物館でくすんだ赤色のモナズ石や斑点の付いたバストネス石の試料を見つめながら、私はそこにもイノベーションの可能性を感じていた。広げられた鉱物には、どれもネオジムが含まれていたからだ。ネオジムは希土類金属(レアメタル)で、スピーカーから風力タービンに至るまで、現在ではあらゆる種類の装置に使用されている。将来的に重要性はさらに増す可能性が高い。

ネオジムを直接観察するために博物館を訪問した頃には、この金属のことを数カ月考えていた。取り憑かれていたと言ってもいいかもしれない。つまり、MITテクノロジーレビューの特集記事(オンライン版はこちら)の取材を始めて以降、ずっと考えていたということになる。この記事では、次の100年間に直面するであろう材料分野の課題を取り上げており、ネオジムは話題の中心となっている。なぜ、この地味な金属のことをそれほど長期間考えているのか、なぜネオジムが技術の未来について多くを語っていると個人的に考えているのか、以下で説明していこう。 

MITテクノロジーレビューはこの秋、創刊125周年を迎える。これを記念して編集部は、1899年の創刊時を振り返るのではなく、次の125年に思いを巡らすことを決めた。

気候変動について取材を重ねる中で、採掘やリサイクル、代替技術といった話題に個人的に引きつけられている。そのため、遠い未来について考え始めたとき、材料のことがすぐに頭に浮かんだ。どんな材料が必要になるのか? 十分な量はあるのか? 技術の進展によって状況はどう変わるのだろうか?

2100年代やそれ以降の時代を考えた際に事態の重要度が変わり、長年取材してきたなじみの話題の一部に対する考え方も変わった。

例えば、この世界を再生可能エネルギーで賄うのに必要な資源は十分にある。だが理論上は、既存の資源を使い果たすタイミングがやってくる。そのとき何が起こるのだろうか? 利用可能な資源の量については、おそらく想像よりも不確かであることが判明した。そして、化石燃料の供給が枯渇し始める時期(「石油ピーク」と呼ばれる概念)を予想する際に、これまでの取り組みから多くを学ぶことができる。

私たちは、将来的にもっとも重要な金属を再利用・リサイクルするシステムを構築することができるだろう。こうしたシステム(施設)があれば、最終的に採掘量を減らし、材料の供給を安定化させて、価格もさらに押し下げることができる。しかし、これらの施設がリサイクルすることになっている技術がいやおうなく変化し、古い仕組みが時代遅れになってしまったらどうだろうか? どの材料の重要性が増すかを予測し、それらを生産・再利用する活動を調整するのは、控え目に言っても困難だ。

これらの重厚な問題の答えを見出すべく、特定の金属を注意深く観察してみた。それこそがネオジムだ。ネオジムは銀白色の希土類金属で、エネルギー分野でもそれ以外でも、多くの種類の技術の中心にある強力な磁石の核を形成している。

ネオジムは、今後100年間に材料分野で直面する課題や機会の多くで活躍する可能性がある。近い将来においてネオジムがさらに必要になるだろうし、ニーズを満たせるだけの量を我先に採掘する中で供給面で制約がかかるかもしれない。将来的に、抽出量を減らすためにネオジムをリサイクルする可能性もある。一部の企業はすでに、それを目的としたインフラ整備を試みている。

世界は今、ネオジムをさらに中心に据えた状況への対応を着々と進めている。だが同時に、ネオジムをまったく必要としない技術を構築するための試みも進行中だ。企業が代替手段を編み出すことができれば、私たちの問題やそれらを解決するための努力が完全にひっくり返される可能性もある。

技術の進展によって、必要とされる材料が変わることがある。そして材料の需要によって、それを開発するための技術が進展することもある。それはループのようなもので、私たちが前進する中で理解と解明を試みる必要があるのだ。こちらの特集記事では、そうしたことに着手した個人的な試みを紹介している。ぜひともお読みいただきたい。

MITテクノロジーレビューの関連記事

希土類金属を生産する競争については、今年の特集記事で詳しく解説している。

私はリサイクルに関する話題を取材している際に、材料の需要についてより深く考えるようになった。その成果の1つが、バッテリーのリサイクル企業、レッドウッド・マテリアルズ(Redwood Materials)を取り上げた2023年の特集記事だ。

希土類を使用しない磁石を取り上げた今年の記事では、企業が将来必要となる材料を変える新技術の開発を試みる1つの例が紹介されている。


「希望」に頼らない未来

「もし私たちが希望に頼るのであれば、私たちは行為主体性を放棄することになる。それは魅力的に思えるかもしれないが、同時に降伏を意味する」。

10冊以上の書籍を執筆しているリディア・ミレットが、新たなエッセーの中でそう記している。エッセーは、気候変動の向こう側にある未来のための闘いにまつわる感情を綴ったものだ。ぜひお読みをいただきたい。

気候変動関連の最近の話題

  • 水素自動車を運転する実際の感覚を味わうため、レンタカーで路上に繰り出し、道中で他のドライバーと対話を重ねた記者の話。ザ・ヴァージ
    → クリーンな輸送を目指す競争において、電気自動車が水素自動車よりも優勢である理由。(MITテクノロジーレビュー
  • 温暖化が進む中、「熱い鋼」の問題が生じている。鋼はコンクリートなどの素材と同様に、熱によって膨張したり歪んだりする。これが原因で、鉄道の減速から送電線で送れる電気の量の減少に至るまで、複数の問題が生まれる可能性がある。(アトランティック
  • オークランドは米国の都市として初めて、すべてのスクールバスを電気自動車(EV)にした。これらのバスは単に子供を送迎するだけでなく、必要に応じてバッテリーから送電網に電気を送ることもできる。(エレクトレック
  • フォームエナジー(Form Energy)は、メイン州で世界最大のバッテリー施設の建設を計画している。同社のシステムは鉄と空気の化学反応を利用した新技術を使用するもので、8500メガワット時相当のエネルギーを保存する能力を有するという。(カナリー・メディア
    → フォームエナジーは、MITテクノロジーレビューの2023年版「注目すべき気候テック企業15社」に選出されている。(MITテクノロジーレビュー
  • より興味深いEV利用法の一例として、ベルギー政府が馬車を電動式にした。外見は昔懐かしい車に少々似ているが、EV化以降の事業は順調だという。(ニューヨーク・タイムズ
  • 米国の自宅所有者は数十億ドル規模の税控除を受けている。家のエネルギー効率を上げて二酸化炭素排出量(CO2)を減らす技術の利用者を優遇する制度は、裕福な家庭に不釣り合いな恩恵を与えている。(E&Eニュース
  • 航空各社は、CO2排出削減に貢献する新しいジェット燃料の使用について重大な約束をしている。航空業界の多数の企業が今後10年間で代替燃料の10%使用を目指しているが、2023年の実績は0.17%にとどまる。(ブルームバーグ
  • 大規模な太陽光発電所では、景観を保つための優秀なパートナーである羊が不足している。太陽光パネルの間の草が伸びないようにするために、米国最大の「ソーラー放牧」プロジェクトおいて、間もなく6000頭の羊が放たれる。(カナリー・メディア
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ケーシー・クラウンハート [Casey Crownhart]米国版 気候変動担当記者
MITテクノロジーレビューの気候変動担当記者として、再生可能エネルギー、輸送、テクノロジーによる気候変動対策について取材している。科学・環境ジャーナリストとして、ポピュラーサイエンスやアトラス・オブスキュラなどでも執筆。材料科学の研究者からジャーナリストに転身した。
日本発「世界を変える」U35イノベーター

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