KADOKAWA Technology Review
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こんにちは赤ちゃん!
2024年生れのキミへ贈る
125年後の未来への手紙
David Biskup
カルチャー Insider Online限定
Happy birthday, baby! What the future holds for those born today

こんにちは赤ちゃん!
2024年生れのキミへ贈る
125年後の未来への手紙

2024年生まれの赤ちゃんの人生は、私たちの想像を超えるものになるだろう。本誌創刊125周年を記念し、AIとテクノロジーが織りなす125年後の未来を大胆に予測。誕生から老年期まで、変貌する日常を専門家の洞察とともに描いてみた。 by Kara Platoni2024.09.06

この記事の3つのポイント
  1. 2024年生まれの赤ちゃんの125年間の人生を通じて、テクノロジーの発展を予測
  2. 教育、仕事、社交、健康管理などあらゆる面を変革し、人間とAIの関係は親密になる
  3. 楽観的な未来像を描きつつ課題にも触れ、未来の実現は次世代次第である
summarized by Claude 3

こんにちは赤ちゃん。お誕生日おめでとう!

キミは知能を持つ機械の時代に生まれた。 機械は受胎したときから、ほぼずっとキミを見守ってきた。 機械のおかげで、両親はキミの小さな心音を聴いたり、アプリで妊娠期間を記録したり、超音波画像をソーシャルメディアに投稿したりできた。 生まれるずっと前から、キミはアルゴリズムに把握されていたのだ。

キミが生まれたのは、奇しくもMITテクノロジーレビューの創刊125周年と時を同じくした。ほんの少しの運と、優れた遺伝子に恵まれれば、キミは次の125年間を見届けられるかもしれない。キミと次世代の機械は、どのように共に成長していくのだろうか? 私たちは12人の専門家に、キミの未来を想像してもらった。そして、これは思考実験であると説明した。 つまり、自由な発想で考えてほしいと依頼したのだ。

過去の捉え方については、ほぼ全員の意見が一致した。コンピューターは巨大な共有型の産業用メインフレームから個人用のデスクトップ・デバイス、そして環境に溶け込むほど小さな電子片へと縮小した。以前はパンチカード、キーボード、マウスなどを介して手の届く程度の範囲で操作されていたコンピューターはウェアラブルになり、そしてごく最近では身体の中に入っていった。私たちの時代では、目や脳のインプラントは治療のみを目的としているが、キミたちの時代ではどうなるか、誰にも分からない。

将来、誰もが考えるように、コンピューターはさらに小型化し、より普及するだろう。しかし、キミたちの時代における最大の変化は、知的エージェントの台頭になるだろう。コンピューターの反応はより速く、より親密になり、特定のプラットフォームに限定されなくなる。コンピューターはツールというよりも、仲間のような存在になるだろう。コンピューターはキミから学習し、キミの案内役にもなるだろう。

つまり、コンピューターは友人になるのだ。

今日から2034年まで《0〜10歳》

キミが生まれたとき、家族は「スマート」なものでキミの身の回りを囲んだ。揺りかご、モニター、子守唄を奏でるランプなどだ。

しかし、キミがテクノロジーに初めて触れる体験としてそれらを挙げる専門家は誰一人としていなかった。代わりに、両親の携帯電話やスマート・ウォッチを挙げた。それは当然とも言える。愛する人たちがキミを揺りかごであやす時、その点滅する魅力的なものがすぐそこにあるのだ。赤ちゃんは、触って何が起こるか確かめることで試行錯誤しながら学ぶ。キミは画面をタップする。すると、光ったり音が鳴ったりする。魅力的だ!

認知的には、生後2歳までは、このようなやり取りから得られるものは多くないと、デジタル世代を研究するワシントン大学のジェイソン・イップ准教授は言う。一方、ロボット工学とコンピューティングにおける疑似触覚を研究するスタンフォード大学機械工学科「シェイプ・ラボ(SHAPE Lab)」のショーン・フォルマー所長は、それは生き物のような物体の世界に導く手助けになると話す。キミは何かを触ると、どう反応するのかと考えるようになる。

キミは、ミレニアル世代(1980年代から2000年代初頭までに生まれた人)とZ世代(1990年代中盤以降に生まれた世代)の子どもだ。つまり、デジタル・ネイティブであり、初めて「インフルエンサー」という概念を確立した世代の子どもなのだ。そのため、成長していく過程において至るところにカメラがある。スクリーンに映る自分の姿を見て、画面の向こう側にいる人たちに笑顔を見せたり、手を振ったりすることを覚える。祖父母はビデオ通話のフェイスタイム(FaceTime)を使って本を読み聞かせ、キミはズーム(Zoom)の会議に映り込む。キミは大きくなるにつれて、自分の画像が社会的な通貨、つまり他人との関係において重要な要素になることに気づくだろう。

小学校には確実にコンピューターが導入されているが、教育者が現実世界とスクリーン上での指導のバランスをどのように取るのかは、今日の教育上の論点となっている。しかし、専門家はキミが初めて知的エージェントと出会うのは、学校だと考えている。チューターやコーチという形でだ。人工知能(AI)のチューターは、拡張現実(AR)による指導と物理的な課題を組み合わせた活動を通じて、キミを指導するかもしれない。従来の授業とは異なる新しい形の教育手法の、ある種の折衷策だ。

カーネギーメロン大学ヒューマン・コンピューター・インタラクション研究所(Human-Computer Interaction Institute)のネスラ・ヤニエは、一部の学校図書館はスキル習得と並行して批判的思考を教える「メイカースペース」のような場所になると考えている。ヤニエは、物理的現実と実質現実(VR)を組み合わせた複合現実を用いて科学や工学の概念を教える教育システム「ノリラ(NoRILLA)」を開発している。例えば、子どもたちは木製のブロックで構造物を組み立て、アニメのAIゴリラからのフィードバックを利用しながら、それがどのように倒れるかを予測する。ノースウェスタン大学ヒューマン・コンピューター・インタラクション・デザインセンター(Center for Human-Computer Interaction and Design)のリズ・ガーバー共同センター長は、学習はますます自己決定的なものになっていくと語る。未来の教室は「高度に個別化される」だろう。AIのチューターがマンツーマン指導や反復型のスポーツの練習を手助けする可能性もある。

これらはすべて今までにないものであるため、専門家たちは未来の形態を推測する必要があった。もしかしたら、学習中に目立たないブレスレットやスマートウォッチがキミのパフォーマンスを追跡し、データをタブレットと同期することで、チューターが練習を手助けしてくれるようになるかもしれない。

そのエージェントは、どのようなものになるだろうか? 盲目の生徒や視力の弱い生徒の指導経験を持つフォルマー所長は、単なる音声になるかもしれないと考えている。ヤニエは、アニメーションのキャラクターを奨励している。ガーバー共同センター長は、デジタル・アバターとぬいぐるみや、あるいは好きな見た目の物理的なものとを組み合わせることも可能だと思いを巡らす。 「想像上の友達です」と同共同センター長は言う。「それが誰なのかは、自分で決めることです」。

AIチューターに誰もが納得しているわけではない。イップ准教授の研究では、子どもたちはAI搭載テクノロジーを「気味が悪い」と表現することが多い。子どもたちは、予測不可能であったり、怖かったり、見張られているように感じるのだ。

子どもたちは社会的交流を通して学ぶため、イップ准教授は、孤立させるようなテクノロジーにも懸念を抱いている。また同准教授は、AIはチュータリングで知識の習得、問題解決といった認知的な側面は扱えると考えているが、社会的側面については確信が持てていない。優秀な教師は、生徒のやる気を引き出す方法や、生徒の気分や体調にどう対処するかを心得ている。 子どもが皮肉を言っていることが、機械に判別できるだろうか? トイレでサボっている子どもを、正しい方向に導けるだろうか? 同准教授は問う。子どもが泣いたり怒ったりしてぐずったとき、AIは「この子はお腹が空いていて、おやつが欲しい」と理解できるだろうか?

2040年《16歳》

16歳になる頃、キミは、高速道路や郊外、気候変動など、自動車が存在しその影響を受ける世界に依然として住んでいる可能性が高い。しかし、自動車文化の一部は変化しているかもしれない。ガソリンスタンドに代わって充電スタンドが普及しているかもしれない。そして、知的エージェントがキミの学校生活を支援したのと同じように、今度は知的エージェントがキミと一緒に運転し、そしておそらく、キミのために運転することになるだろう。

BMWデザインワークスでインタラクション・デザインのクリエイティブ・ディレクターを務めるパオラ・メラズは、このエージェントを「道路上の友人」と表現している。トヨタの北米デザイン・スタジオであるキャルティ・デザイン・リサーチ(Calty Design Research)のチーフ・デザイナー、ウィリアム・チェルゴスキーは、これを「まさに車の中の友人」と呼ぶ。

若いうちは、そのエージェントは付き添いのようなもので、速度を制限したり、門限に間に合うように家に送り届けてくれると、チェルゴスキーは言う。また、ハンバーガーチェーンのイン・アンド・アウト・バーガー(In-N-Out Burger)の近くに来ると、キミが「アニマル・フライ(Animal Fries)」が好きなことを把握しているので、教えてくれるはずだ。そして、キミはネットと現実の世界の両方で友人たちと交流したいので、エージェントはソーシャルメディアのフィードをくまなくチェックし、キミの友人たちがどこにいるのかを確認し、待ち合わせを提案してくれる。

車は長い間、ティーンエイジャーのたまり場であったが、運転の自動化が進むにつれ、車内はリビングルームのような空間になる可能性がある(道路や、つまみだらけの計器盤に目を向ける必要はなくなるだろう)。メラズは、乗客が向かい合って会話したり、ゲームができるようにシートの位置が再配置されると予想している。「自分が運転している世界とやり取りするゲームや、速度、時間帯、地理的要素がストーリー展開に影響を与えるように設計された映画を想像してみてください」。

計器盤がなければ、どうやって車を制御するのか?  今日の最小限の内装ではダッシュボードにタブレットが搭載されているが、画面上の無限に続くメニューをたどっていくのはあまりにも非直感的だ。次のステップはおそらくジェスチャーやボイス・コントロールだろう。 理想的には自然言語による制御だ。 転機となるのは、詳細なコマンドを与えるのではなく、ただ「暑いから涼しくしてくれない?」とだけ言えば済むようになった時だとチェルゴスキーは言う。

キミの行動をすべて把握し、記録しているエージェントは、いくつか奇妙な問題を提起する。ドライバーによって性格が変わるのだろうか?(もちろん!) 秘密を守れるのだろうか?(「お父さんはタコベルに行ったと言っていたが、本当に行ったのかな?」とチェルゴスキーは冗談めかして言う。) すべてを把握し、記録しているエージェントは、車内に限定されず、他の場所でも機能するのだろうか?

専門家は「それは必要ない」と言う。メラズは、(車内のエージェントは)未来型のアレクサやグーグル・ホームなどの他のエージェントに統合されることを想像している。「すべてが接続されるのです」。そして、車が故障してもエージェントは故障しないと、チェルゴスキーは言う。「実際、その『魂』を車から車へと移すことができるのです。車をアップグレードしても、その関係が途切れるわけではありません。一緒に動くのです。一緒に成長してきたのですから」。

2049年《25歳》

20代半ばまでには、キミの生活に入り込んでいるエージェントは、キミについて恐ろしく多くのことを把 …

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