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遺伝子編集ベビー騒動から6年、中国人科学者が研究を継続する理由
AP Photo/Mark Schiefelbein
A controversial Chinese CRISPR scientist is still hopeful about embryo gene-editing. Here’s why.

遺伝子編集ベビー騒動から6年、中国人科学者が研究を継続する理由

世界初の遺伝子編集ベビーを作って3年間投獄されたフー・ジェンクイ(賀建奎)が、新たな計画についてMITテクノロジーレビューに語った。胚遺伝子編集に取り組むのは、人類の進化を変えるためではなく、自身の家族や患者たちの人生を変えるためだという。 by Zeyi Yang2024.08.07

この記事は米国版ニュースレターを一部再編集したものです。

2018年、中国人科学者のフー・ジェンクイ(賀建奎、当時は南方科技大学准教授)が遺伝子編集ツールである「CRISPR(クリスパー)」を使って生きているヒト胚の遺伝子を編集し、世界初の遺伝子編集ベビーを誕生させたというニュースは、MITテクノロジーレビューの医学生物学担当上級編集者であるアントニオ・レガラードによって初めて伝えられた。このニュースにより、フー元准教授(本人はJKと呼ばれることを好むため、以降はJKと記載)は世界中で物議を醸す人物となった。そしてそのわずか1年後、JKは違法な医療行為の罪を犯したとみなされ、中国政府によって3年の禁固刑に処せられた。

2022年に出所したJKが去る7月25日、本誌のレガラード編集者とマット・ホーナン編集長とオンラインで対談し、自身が実施した実験や現在の状況、今後の計画について話した。

MITテクノロジーレビューの購読者はこの記事で文字起こしを読むことができる。ここでは改めて、JKが話してくれたことのハイライトをいくつか要約して紹介させてほしい。

出所後、JKの人生にはさまざまなことがあった。香港に住もうとしたが現地政府に拒否された。北京で非営利の研究所を設立すると公に宣言したが、まだ実現していない。武漢にある私立大学「武昌理工学院」の遺伝医学研究機関の責任者として雇われたが、またもや解雇されたようだ。スタット・ニュース(STAT News)によると、現在は中国最南端の島嶼省である海南省に移住しており、そこで研究室を立ち上げたという。

MITテクノロジーレビュー主催の対談の中で、JKは現在海南省に住み、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)などの遺伝性疾患の治療を目的とする遺伝子編集技術の利用に取り組んでいることを認めた。

JKは現在、中国や米国の企業からの私的な寄付によって資金を得ているが、企業の名前は明かさなかった。中には、これまでの研究を続けられるように、規制が緩く人目につかない国での研究費用を出すという提案すらあったが、それも断った。JKは、学術界に戻って研究することを強く望んでいるが、民間企業で科学研究をすることもあり得ると話した。

JKによれば、今のところはマウス、サル、そして生存不可能なヒト胚のみを使った実験を計画しているという。

2018年のJKの実験がきっかけとなり、中国は生殖用途での遺伝子編集を明確に禁じる規制を発表した。現在、編集した胚をヒトに移植することは中国では犯罪であり、最高7年の懲役刑の対象となる。JKは、現在している研究はすべて「あらゆる法律、規制、国際倫理基準を遵守する」と繰り返し述べたが、遺伝子編集をめぐる規制のあるべき姿について尋ねる質問には、回答を避けた。

しかしJKは、いつの日か社会が考えを変え、胚遺伝子編集を医療の1つの形として受け入れるようになると期待している。「私たち人間は、常に保守的です。常に新しいことについて心配します。人々が新しい技術を受け入れるには時間がかかります」と、JKは話した。そのような社会的受容の欠如が、胚遺伝子編集のためにCRISPRを使用することに対する最大の障害であると、JKは考えている。

DMD以外にJKが遺伝子編集療法に取り組んでいる別の病気は、アルツハイマー病である。それには個人的な理由がある。「母がアルツハイマー病を患っているので、アルツハイマー病に取り組むことにしました。私もアルツハイマー病になるし、娘や孫娘がなるかもしれません。だから、それを変えるために何かしたいのです」と、JKは話した。胚遺伝子編集に興味を持つのは、決して人類の進化を変えようとしているのではなく、自分の家族や、助けを求めて自分のところにやって来た患者たちの人生を変えるためであると語る。

アルツハイマー病の治療に関するJKのアイデアは、ヒトのDNA配列の中の1文字を修正し、アイスランドとスカンジナビアの一部の人々に見られる自然突然変異を模倣することである。この突然変異がアルツハイマー病へのかかりにくさに関連している可能性があることが、これまでの研究でわかっている。JKによれば、この治療法の基礎研究は2年ほどで終えられるだろうが、現在の規制下でヒトによる臨床試験をするつもりはないという。

JKはそのような遺伝子編集療法をワクチンにたとえており、将来誰もが簡単に受けられるようになるだろうと言う。「たとえば50年後の2074年には、胚遺伝子編集がIVF(体外受精)ベビーと同じくらい一般的になり、現在わかっている遺伝性疾患のすべてを予防できるようになると思います。だからその頃に生まれてくる赤ちゃんは、遺伝性疾患から解放されているでしょう」と、JKは話した。

これまで自分の身に起こったことにもかかわらず、JKは胚遺伝子編集の将来について、かなり楽観的なように見える。「胚遺伝子編集は良いことであると、いずれ社会に受け入れられると信じています。人間の健康を向上させるからです。だから、私は社会が受け入れるのを待っているのです」と、JKは話した。


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ロシア向けEV密輸ビジネスが消滅

中国メディア「ライフウィーク(Lifeweek)」によれば、今年初めにロシアが輸入規制を強化して以来、かつては儲かった中国製電気自動車(EV)の密輸ビジネスがほとんど消滅してしまったという。以前は、ロシアにおける中国製EVの需要の高さと、中央アジアの中継国における関税の低さを利用して、密輸業者は莫大な利益を得ることができた。たとえば、ある実業家は12月に12台をまとめて輸出し、87万人民元(約12万ドル)を稼いだ。

しかし、ロシアの新たな政策によって輸入関税が大幅に引き上げられ、車両登録も厳格化された。BYD(比亜迪)やXPeng Motors(小鵬汽車)などの中国自動車メーカーはこれをチャンスと捉え、この市場に製品を提供するための認可事業を中央アジアで立ち上げることも検討している。このような変化によって、収益性の高いビジネスはかろうじて持続可能なビジネスへと変貌を遂げ、事業者は市場への適応か撤退かを迫れられている。

あともう1つ

ドライバーの居眠りを防止するため、中国の一部の高速道路には夜空を赤、青、緑の光線で照らすレーザー装置が設置され、人々の注意を引きつけている。まるでSF小説のような話だが、このシステムを作った会社によると、2022年から中国の10以上の省で使用されているという。

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ヤン・ズェイ [Zeyi Yang]米国版 中国担当記者
MITテクノロジーレビューで中国と東アジアのテクノロジーを担当する記者。MITテクノロジーレビュー入社以前は、プロトコル(Protocol)、レスト・オブ・ワールド(Rest of World)、コロンビア・ジャーナリズム・レビュー誌、サウスチャイナ・モーニング・ポスト紙、日経アジア(NIKKEI Asia)などで執筆していた。
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