KADOKAWA Technology Review
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AIとは何なのか? その歴史と主張を紐解く
Jun Ioneda
A short history of AI, and what it is (and isn’t)

AIとは何なのか? その歴史と主張を紐解く

AIが世間の関心を集め、さまざまな用途に適用されつつある一方で、AIの正確な正体に関する見解が一致せず、誰もその正体をわかっていないのはなぜだろうか。その疑問を深掘りしたMITテクノロジーレビューの記事の概要を紹介しよう。 by Melissa Heikkilä2024.08.08

この記事の3つのポイント
  1. AIの正体について統一見解はなく誰も正確に知らない
  2. AIには熱狂的なファンの世界があり信仰に近い姿勢がある
  3. AIをめぐる議論は馬鹿らしく思えるが人類全体に影響する
summarized by Claude 3

この記事は米国版ニュースレターを一部再編集したものです。

得てして、もっとも単純な質問は回答するのがもっとも難しい。それはAI(人工知能)にも当てはまる。「世界のさまざまな問題を解決する技術」というのが謳い文句だが、AIの正確な正体は誰も知らないように思われる。AIというのは、自動運転車から顔認証やチャットボット、高機能なエクセルにまで及ぶ技術に付けられた名称である。しかし、一般的にAIと言えば、人間が実行する際に知能が必要と思われる作業をコンピューターに実行させる技術を指している。

なぜ、AIの正確な正体に関する見解が一致しないのか、あるいは誰もその正体を知らないのか。世間の関心を集めている理由も含め、本誌のウィル・ダグラス・ヘブン編集者が数カ月をかけて、そうした疑問を掘り下げるべく取材を続けている。ヘブン編集者はAI分野最高峰の思想家たちに話を聞き、「AIとは何か」というシンプルな質問を投げかけた。AIの過去と現在を見つめ、今後の姿を想定した素晴らしい記事に仕上がっている。 こちらからご確認いただきたい。 

記事の概要を以下に紹介する。

そもそも「人工知能」という呼び名はあまり一般的ではなかった。 「人工知能」は、コンピューター科学者のジョン・マッカーシーが、1955年にニューハンプシャー州のダートマス大学の夏季研究プログラムの資金を申請した際に生み出した言葉とされている。だが、マッカーシーの複数の同僚はその名称が気に入らなかった。1人は「『人工』という言葉は、この技術に何かごまかしがあるように思わせる」と言った。「オートマタ研究」「複雑情報処理」「エンジニアリング心理学」「応用認識論」「神経サイバネティクス」「非数値コンピューティング」「神経力学」「高度自動プログラミング」「仮説的オートマタ」などという名称の方がいいという意見もあった。しかし、いずれもAIという言葉の格好良さや魅力には及ばない。

AIには熱狂的なファンの世界がいくつかある。 AIを信奉する人々が存在し、AI技術の現在の力や今後予測される進化を信じる姿勢は信仰に近いものがある。サンダー・ピチャイやサティア・ナデラなどのテック大手の「主任マーケター」、イーロン・マスクやサム・アルトマンといった業界の「過激派」、それにジェフリー・ヒントンのような著名コンピューター科学者などの「セレブ」たちが話題を振りまき、物語を形成していく。AIが誇大広告されるほど、それに対抗するアンチ派も声を上げ、野心的でしばしば大それた言説を潰そうと待ち構える。その結果、両陣営の話はかみ合わなくなる。常に誠意ある話し合いが実施されているわけでもない。

ときに馬鹿らしく思えるこうした議論が、人類全体に影響を及ぼすような大きな結果につながる。 AI界には巨大なエゴが多数存在し、莫大な資金が注がれている。だがそれ以上にこうした議論が重みを増すのは、業界の指導者と特定の意見を持った科学者が国の元首や議員に呼ばれ、AIの中身やAIができること(そして恐ろしさ)について説明を求められたときだ。検索エンジンから文書処理アプリやスマートフォンのアシスタントに至るまで、毎日使うソフトウェアにAIが組み込まれた場合にも議論の重要性が増す。AIがこの世からなくなることはない。しかし、自分たちに売られているものが何なのかを知らなかった場合、犠牲になるのは一体誰なのだろうか?

1つの例として、「テスクリアリスト(TESCREAList)」をご紹介しよう。 「テスクリアル」という地味な言葉は、トランスヒューマニズム、エクストロピアニズム、シンギュラリティアニズム、コスミズム、理性主義、効果的利他主義、長期主義という単語の頭文字をさらに地味に並べたものである。元グーグルの倫理AIチームの共同リーダーで分散型AI研究所(Distributed AI Research Institute:DAIR)を設立したティムニット・ゲブルと、ケース・ウェスタン・リザーブ大学で哲学と歴史を研究するエミール・トレスが生み出した言葉だ。

テスクリアルという言葉から永遠の命を想定する者もいれば、別の星への植民を想像する者もいる。その根底には、全能の技術が手の届くところにあるだけでなく、不可避であるという共通の信条がある。テスクリアリストは汎用AI(AGI)が世界の問題を解決するだけでなく、人類を「レベルアップ」させてくれると信じている。ゲブルとトレスは、人類を「向上させる」という共通の焦点があるそうした世界観の一部を、20世紀の人種差別的な優生学運動に結び付けている。

AIは数学? それとも魔法? いずれにせよ、世間はこのどちらかを強く信じており、その姿勢は宗教じみている。 「『このような種類の仕組みによって人間の知能を再現できる』という主張は反感を買うことがあります」。ブラウン大学でニューラル・ネットワークを研究するエリー・パブリック助教授はヘブン編集者にそう語っている。「この点について世間は強固な信念を抱いていて、ほとんど宗教のようです。一方で『神コンプレックス』気味の人々もいます。そのため、単純に『再現できない』という主張に対しても、攻撃的になります」。

こうした論争のすべてについて、ヘブンの記事は明確な視点を提供している。 ここでは詳しく書かないが、単純な答えはない。だが、魅力的な人物や視点が多数紹介されている。 こちらの記事を最後まで読むことをお勧めする。そして、AIの本当の正体について自分なりに考えてみてはいかがだろうか。


AIはさらなる創造性をもたらしてくれるが、限界がある

生成AIモデルは、文章の一節や画像をはじめ、映像クリップや音声トラックまであらゆるものの作成を容易にし、スピードアップした。AIの成果物は確かに創造的に見えることもあるが、AIモデルは実際に人間の創造性を向上させているのだろうか? オープンAI(OpenAI)の大規模言語モデル「GPT-4」を使って短い物語を書くという研究が実施された。

結果としてGPT-4は役に立ったが、そこには限界があった。研究では、創造性が足りない書き手の成果物がAIの力で向上した一方で、すでに創造性を有する人物が書いた物語の質についてはほとんど差がなかったと結論付けられている。また、AIを利用して書かれた物語は、すべて人間の手で創作した物語よりも互いに似通ったものになった。

詳細はこちらの記事をお読みいただきたい。

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メリッサ・ヘイッキラ [Melissa Heikkilä]米国版 AI担当上級記者
MITテクノロジーレビューの上級記者として、人工知能とそれがどのように社会を変えていくかを取材している。MITテクノロジーレビュー入社以前は『ポリティコ(POLITICO)』でAI政策や政治関連の記事を執筆していた。英エコノミスト誌での勤務、ニュースキャスターとしての経験も持つ。2020年にフォーブス誌の「30 Under 30」(欧州メディア部門)に選出された。
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