未来の職種:軌道の安全を守る「スペースデブリ・エンジニア」
人工衛星の打ち上げ急増によって、宇宙空間が混雑し始めている。スティン・レメンズは欧州宇宙機関(ESA)でいわゆる「宇宙ゴミ」の削減に取り組んでいる。 by Elna Schütz2024.06.27
- この記事の3つのポイント
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- 欧州宇宙機関のスティン・レメンズは宇宙ゴミ削減に取り組んでいる
- 宇宙機のミッション後の処理計画が不十分で宇宙ゴミが増加している
- 宇宙ゴミ削減には宇宙機設計時から持続可能性を考慮することが重要だ
スティン・レメンズは他に類を見ない清掃の仕事をしている。欧州宇宙機関(ESA)の上級スペースデブリ軽減アナリストであるレメンズは、宇宙機の設計者や業界全体と連携し、軌道環境をなるべく乱さないようなミッションを立案することで、宇宙の汚染対策に取り組んでいる。
宇宙機の打ち上げは人々の大きな注目を浴びてきたが、その残骸をどうするかという問題はほぼ無視されてきた。これまでの多くのミッションには出口戦略がなかった。人工衛星は、地球の大気圏に再突入して燃え尽きてしまうような軌道に乗せられる代わりに、寿命が尽きても軌道上にそのまま残される。その結果、監視が必要で、衝突を避けるために回避操作をしなければならないデブリが生み出される。「過去60年間、私たちは(宇宙を)まるで無限の資源であるかのように利用してきました」とレメンズは言う。「しかし、とりわけこの10年間で、そうではないことがかなり明らかになりました」。
細部にわたり設計する:軌道上の乱雑な物体、いわゆる「宇宙ゴミ」を削減するための第一歩は、ミッションを完了したら安全に宇宙から去って行く宇宙機を設計することだ。「学生の時には無邪気に、『それはそんなに難しいことなのか?』と思っていました」とレメンズは言う。その答えは彼が予想していたよりも複雑であることが分かった。
ESAで、彼は特定のミッションについて科学者やエンジニアと協力して、適切なアプローチを考案している。打ち上げ後数十年経っても確実に機能する推進装置を組み込むというアプローチもあれば、宇宙機を移動させて他の人工衛星やスペースデブリと衝突しないようにするシステムの設計を伴うアプローチもある。また、航空やインフラに大きなリスクを与えることなく、残骸を大気圏に放出する計画にも取り組んでいる。
宇宙空間の標準化:地球の大気が人工衛星を引っ張り、最終的には人工衛星を軌道から外す。国内および国際的ガイドラインでは、人工衛星が運用寿命を終えた時に高度を下げて大気圏に再突入させることで、これを可能にすることが推奨されている。これまでは最大25年が目標だったが、レメンズらは現在、ミッションの計画と設計の開始時から考慮に入れなければならない、5年以内を目標とすることを提案している。
この方針変更の必要性についての説明は少し説教じみたものに感じられるかもしれないとレメンズは言い、それがこの仕事の中で一番嫌いな部分だと語った。宇宙の広大さを「無限の軌道」と考えないように人々を説得するのは難しいことだと彼は言う。このまま変化がなければ、スペースデブリの量が今後数十年で深刻な問題を引き起こし、軌道にはゴミが散らかり、衝突事故が増加する可能性がある。
未来を形作る: レメンズは、将来的には自分の仕事が不要になることを望んでいると語るが、約 1万1500基の人工衛星と 3万5000個以上のデブリが追跡されている状況で、さらなる打ち上げも計画されていることを考えると、その望みが叶う可能性は低そうだ。
研究者たちは、宇宙ミッションの遂行方法に対するより抜本的な見直しを検討している。たとえば、いつの日か軌道上で衛星を解体して、その部品をリサイクルする方法を見つけられるかもしれない。そのようなアプローチがすぐに実現できる可能性は低いだろうと、レメンズは言う。しかし、より多くの宇宙機設計者が持続可能性について考えるようになったことに彼は勇気づけられている。「このアプローチがごく普通のものになって、宇宙機を設計するときに人々が考える標準的エンジニアリング手法となることが理想です」。
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