フラッシュ2024年6月25日
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宇宙
京大など、宇宙創成期の「原始重力波」を手計算する手法を発見
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]京都大学と高エネルギー加速器機構(KEK)の共同研究チームは、宇宙の創成直後の急激な加速膨張(インフレーション)の仕組みを解明するカギとなる時空のさざ波、「原始重力波」の数値計算を大幅に簡単化する方法を見出した。
宇宙の創成直後、非常に高い真空のエネルギーにより宇宙が急激な加速膨張していた時期を経てビッグバンが起こったと考えられており、この理論は、宇宙の観測を通じて原始宇宙の密度の濃淡を調べる研究によって検証されてきた。しかし、何が急激な加速膨張を引き起こした駆動源だったのかその全体像はまだ分かっていない。
研究チームは今回、原始重力波を計算するにあたって、宇宙をモザイクアートのように捉え直す「分割宇宙アプローチ」に着目した。分割宇宙アプローチでは場所ごとに異なる密度をもつ非一様な宇宙を小さく分け、同じ密度からなる小さな宇宙の集合体と捉え直すことで、非一様な密度揺らぎの時間発展を解く複雑な作業を、一つひとつの分割された宇宙の時間発展を解く作業に置き換えられる。
研究チームはこの手法を用いることで、原始重力波の計算を大幅に簡単化することに成功。これまで複雑な数値計算が必要だった模型でも手計算で重力波を予言できるようになった。同チームはさらに、この手法が原始重力波の生成機構を直観的に理解する際にも役立つことを示した。
今回の成果により、これまで解析が難しかった模型も含めて多様な宇宙模型の理論予言を計算できるようになり、最新の重力波観測と比較することで、創成直後の宇宙の解明につながることが期待される。研究論文は2024年6月4日に、国際学術誌フィジカルレビュー・レターズ(Physical Review Letters)に掲載された。
(中條)
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