天文学者とAIの出会い
「データの豪雨」から
宇宙の未知を解き明かす
天文学者たちは、巨大な天体観測データを処理するため、AI技術に助けを求めている。ハーバード大学のアストロAIは、データからAIで新たな発見を導き出そうと、異分野融合の取り組みを進めている。 by Zack Savitsky2024.05.22
宇宙からの電波信号を探すため、オーストラリアと南アフリカの砂漠地帯に、天文学者たちが金属探知器の「森」を植えている。約5年後にこれらが起動した時、スクエア・キロメートル・アレイ天文台(Square Kilometer Array Observatory)は、宇宙の最初の星や銀河の進化のさまざまな段階に関する新しい情報を探索する予定だ。
しかし、膨大な数のアンテナやパラボラアンテナを同期させた後、天文学者たちはすぐに新たな課題に直面することになる。それは、ノートPCにして100万台分にも相当する約300ペタバイトの宇宙に関するデータを毎年精査することだ。
この問題は、今後10年の間に他の場所でも繰り返されるだろう。天文学者たちは、空全体を撮影する巨大カメラを構築し、遠くの惑星を探すために赤外線望遠鏡を打ち上げ、前例のない規模のデータを集めることになる。
「私たちは本当にデータ処理の準備ができていません。みな焦るべきです」。こう話すのは、ハーバード・スミソニアン天体物理学センター(Harvard-Smithsonian Center for Astrophysics)の計算宇宙物理学者であるセシリア・ガラフォだ。「データが多すぎて、それを処理する技術がないということは、データがないのと同じことなのです」。
情報の大洪水に備え、天文学者たちは人工知能(AI)に助けを求め、大規模かつ扱いにくいデータセットからパターンを見つけ出すためにアルゴリズムを最適化している。現在では、コンピューター科学と天文学の分野の融合に特化した研究所を設立し、新たなパートナーシップの構築に取り組んでいる研究者もいる。
2022年11月、ガラフォは天体物理学センター内のパイロット・プログラムとして、「アストロAI(AstroAI)」を創設所長として立ち上げた。それ以来、同所長は50人以上のメンバーからなる学際的なチームを結成し、宇宙の起源や地球外生命体の存在といった深い疑問に焦点を当てた数十のプロジェクトを計画してきた。ここ数年、同所長の先例に続いて同様のグループがいくつか発足し、大規模な研究機関へとスケールアップするための資金獲得を競っている。
ガラフォ所長は、天文学、物理学、コンピューター科学のキャリアを行き来しながら、AIモデルの潜在的な有用性を認識した。その過程で同所長は、過去の共同研究において大きな障害となっていた「言語の壁」についても気づいた。天文学者とコンピューター科学者は、似たような概念を表現するのに異なる言葉を使うため、力を合わせるのに苦労することがよくある。アルゼンチンで育ったガラフォ所長は、英語だけの学校で学んでいくのに苦労した経験から翻訳の問題を痛感しており、天文学者とコンピューター科学者のコミュニティの人々を1つ屋根の下に置くことで、共通の目標を確認し、意思疎通の方法を見つけられるよう取り組んできた。
天文学者はすでに何年も前からAIモデルを活用しており、主に望遠鏡のデータから超新星などの既知の天体を分類するのに使われている。ヴェラ・C・ルービン天文台(Vera C. Rubin Observatory)が来年稼働し、年間の超新星検出数が数百から数百万に急増すれば、この種の画像認識はますます重要になるだろう。しかし、AIの新 …
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